低廉な空き家を売却すると報酬額は?400万円以下の仲介手数料の特例を解説!

低廉な空き家の報酬額は?400万円以下の仲介手数料を解説


この記事を書いた人
小島 優一
宅地建物取引士

宅地建物取引士、2級ファイナンシャルプランニング技能士。生命保険会社にてリテール業務に従事した後、2014年に不動産仲介会社であるグランドネクスト株式会社を設立。 2021年より幻冬舎ゴールドオンラインにて不動産を通じて財産を守る、増やす、残す記事を連載している。 >> 詳細はこちらから

この記事のまとめ
  • 低廉な空き家を売却した際の報酬額を解説
  • 400万円以下と800万円以下の物件では仲介手数料が違う?
  • 低廉な空き家の売主と買主へのメリットを紹介

現在、日本各地で問題となっている空き家の増加。

その中でも、価格が400万円以下の「低廉な空き家」の売却は特に厳しい状況です。

しかし、これらの物件に対して適用される特例が存在します。

仲介業者が従来の手数料以上に報酬を受け取れる制度が導入され、特に報酬の限度額が引き上げられたことで、不動産市場の活性化が図られています。

本記事では、低廉な空き家の売却に関する特例を詳しく解説し、この制度の適用条件や報酬額について説明します。

低廉な空き家の売却報酬についての特例を徹底解説

山口山口編集者

低廉って、簡単に言うと『値段が安い』ってことなんですよね。

具体例を挙げると、400万円未満の不動産(たとえば空き家)を売るときの話です。

でも、『400万円が安いってどういうこと!?』って思う人もいるかもしれません。

小島解説員小島解説員

ただ、不動産ってもともと高額なものなので、400万円くらいだと『安い方』と評価されます

こういった低廉な物件は仲介手数料が少額になりがちで、不動産業者の負担が大きくなります。

そのため、政府は400万円未満の物件を売却する場合の特例を設けました

低廉な空き家に適用される特例制度とは?

400万円以下の低廉な空き家等を売却する際に、特例が設けられました。

(参照元:国土交通省

この特例の目的は、低価格な物件でも業者が適切な報酬を受け取れるようにすることで、売却のハードルを下げ、空き家問題を解決することです。

従来の手数料では、例えば100万円の物件ではわずか55,000円しか仲介手数料を受け取れませんでしたが、特例が適用されることで最大198,000円まで請求可能となります。

さらに、2024(令和6)年6月21日の改正により、2024(令和6)年7月1日からは、物件売買価格が800万円以下の際、報酬額の限度額が「最大30万円(税抜)」の報酬まで請求が可能と変更されました。

MEMO

この改正により、低廉な空き家の売却に対する報酬が大幅に引き上げられ、より積極的に空き家の流通を促進することが期待されています。

報酬額が198,000円に設定された理由

この報酬額が設定された背景には、不動産業者の業務負担に見合う報酬を確保するという意図があります。

(参照元:総務省統計局

現在、日本では空き家が年々増加しており、2033年には空き家率が30.2%になるとの予測が野村の調査で明らかになりました。

空き家が増えると、犯罪や治安の悪化、自然災害や腐敗した木材などの問題、地域の不動産価値の低下などが懸念されます。

山口アイコン山口編集者

空き家を放置するとデメリットしかありません。

しかし、空き家を売りに出しても、不動産会社が積極的でなければ、なかなか売れません。

小島解説員小島解説員

さらに、何十億円の不動産を売買する手間と、400万や300万の低価格の空き家を売買する手間は、実際にはそれほど変わりません。

MEMO

例えば、1億円の物件の仲介手数料は、1億円×3%+6万円=306万円ですが、100万円の物件の仲介手数料は、100万円×5%+消費税で、55,000円です。

さらに、地方にある低価格の空き家では、現地調査の手間が増えることもあります

手間がかかって、報酬も少なければ不動産会社が低価格の空き家を積極的に売ろうとするのは難しいでしょう。

そのため、空き家問題は進行する一方です。

そこで、業者が取引に前向きに取り組めるよう、400万円以下の物件には最大で198,000円(税込)の報酬を受け取れる特例が制定されました

この特例により、業者の赤字リスクが軽減され、売却活動が活発になることが期待されます。

400万円以下の空き家の仲介手数料は198,000円!条件を解説

空き家を売却しようと考えている方にとって、400万円以下の物件で仲介手数料が固定されている点は大きなメリットです。

この特例により、低価格の物件でもしっかりとしたサポートを受けつつ、費用負担が軽減されることが期待できます。

ただし、この制度にはいくつかの条件が設定されており、事前に確認しておくことが重要です

山口山口編集者

以下でその条件を詳しく解説します。

売却対象となる物件の基準

まず、仲介手数料が198,000円に固定される物件の基準について理解しておきましょう。

対象となるのは主に、以下の条件を満たす物件です。

198,000円の報酬額になる物件
  • 価格が400万円以下の物件:これは一般的に「低廉な空き家」とされ、地方に多く見られる物件が該当します。
  • 築年数や建物の状態:物件の使用状況や年数は問われません。古い家屋でも、400万円以下であれば対象となります。
  • 通常の売買に比べ、物件調査や資料収集にかかる費用が発生する場合

この基準に該当する物件は、特に地方の空き家が多いです。

山口アイコン山口編集者

なかなか売れずに残っている空き家が地方には多いようですね。

仲介手数料が増額したことにより、一見損をした気分になる人もいるかもしれません。

小島解説員小島解説員

MEMO

しかし、売れないまま空き家で固定資産税がかかってしまうより、売却で利益を得る確率が高くなった方が売主さんにとって有益です。

どのような条件で報酬額が増加するのか?

通常の仲介手数料が198,000円に設定されていますが、状況によっては報酬額が増加する場合があります。

具体的には、以下のような条件が該当します。

198,000円の報酬額になる条件
  • 調査にかかる費用:売却物件が遠方であったり、現地調査や書類作成に追加の手間が発生する場合、調査費用が上乗せされることがあります。これは売主に対して事前に説明・合意が必要です。
  • 特別な広告費用:売却に際して、特別な広告手段を使用した場合、その費用が加算されることがあります。

これらの条件に該当する際は、不動産会社との間で十分な説明を受け、納得の上で契約を進めることが重要です。

売主と不動産会社の関係における注意点

売主が注意すべき点として、不動産会社との契約内容をよく確認することが挙げられます。

特に、媒介契約書に記載される「調査費用」や「追加報酬」についての条件は、後からトラブルになるケースも考えられます。

注意点
  • 契約内容を事前に確認:媒介契約書に「調査費用を支払う」といった項目が含まれている場合、事前にその費用がどのような条件で発生するのか確認し、双方で合意しておくことが重要です。
  • 不透明な費用の発生を防ぐ:契約後に予想外の費用が発生することを防ぐために、契約時にしっかりと確認し、必要であれば第三者に相談することも推奨されます。

不動産取引は売主と不動産会社の信頼関係が重要ですので、疑問点や不安な点があれば、必ず解消してから契約を進めましょう。

実際の報酬額計算例|具体的なシミュレーション

仲介手数料の計算は、物件の売却価格に応じたパーセンテージで決定されます。

取引金額が低廉な物件(特に400万円以下の空き家等)では、特例により、従来の仲介手数料に加え、現地調査にかかる費用も請求できるようになっています

たとえば、300万円の物件を売却する場合、通常の計算では「300万円×4%+2万円=14万円(税別)」の仲介手数料が発生します。

しかし、この場合、さらに現地調査費用などが追加される可能性があります。

たとえば、調査費が4万円かかった場合は、合計で「14万円+4万円=18万円(税別)」が報酬の上限となります

また、依頼者に請求できる報酬額は、最終的には18万円(税別)を超えない範囲で設定されることが法律で定められており、費用の内容やその根拠についても、売主に十分な説明が必要です。

計算例

物件価格300万円の場合の計算

  • 仲介手数料:300万円×4%+2万円=14万円(税別)
  • 現地調査費用:4万円(税別)
  • 合計請求額:18万円(税別)

このように、物件の価格に応じて報酬額は変動しますが、現地調査などにかかる費用を売主に説明し、合意を得ることが重要です。実際の請求額は、双方での同意を前提として決定されるため、契約時には詳細な説明が必要になります。

他のケースでも同様に、物件の価格に応じた手数料と現地調査費用の合計額を計算し、上限額を超えないように注意しましょう。

宅建業法における条文とチェックポイント

不動産業界における仲介手数料は、宅建業法によって厳格に定められています。

特に空き家などの物件を取り扱う際には、宅建業法第46条が大きな役割を果たします

この法律に従うことで、業者と依頼者双方に公平な取引が成立することが求められています。

依頼者は、媒介契約を結ぶ際に報酬額やその内容をしっかり確認し、事前に合意することが必要です。

これにより、不動産取引におけるトラブルを防ぎ、透明性の高い取引が実現されます。

宅建業法第46条の特例を理解しよう

宅建業法第46条は、宅地や建物の売買における仲介手数料の上限を定めています。

特に注目すべきは、空き家など低廉な物件を取り扱う際の特例です。

この特例では、従来の手数料に加えて、現地調査費用なども請求できることが認められています。

ただし、依頼者への報酬額は最大で18万円(税別)を超えない範囲で請求することが義務付けられています。

例えば、物件の価格が400万円を超える場合、仲介手数料は「400万円×3%+6万円=18万円(税別)」までが上限となりますが、現地調査などの費用が発生した場合、依頼者に説明し合意を得ることで、追加請求が可能になります

実際に2024年7月1日以降の契約更新において、この特例が適用されるケースも増えているため、契約時にはしっかりとした確認が必要です。

このように、宅建業法第46条の理解は、特に空き家等の物件取引において重要なポイントとなります。

報酬額については依頼者に対して明確に説明し、合意を得た上で進めることが求められるため、法律のチェックポイントを押さえておきましょう。

空き家問題解決に向けた報酬特例のメリットとは?

山口山口編集者

空き家問題は、日本全国で深刻化しており、特に地方では多くの空き家が放置されている現状があります。

これに対応するために導入された報酬特例制度は、空き家の流通促進に大きな役割を果たしています。

小島解説員小島解説員

この制度の改正により、空き家問題に対する解決策として報酬の引き上げが可能となり、不動産業者のモチベーションを高め、空き家の売却を進める助けとなっています。

空き家問題の現状と報酬制度の役割

空き家問題は深刻化しており、2018年には空き家率が13.6%に達しました

これは、住宅10軒のうち1軒以上が空き家であることを意味します。さらに、野村総合研究所の予測によると、2033年には空き家率が30.2%に達し、10軒に3軒が空き家になる見込みです。

この増加は、少子高齢化や人口の都市集中が影響しています

空き家が増えることで、地域の景観が悪化し、治安や環境に悪影響を及ぼす可能性があります。

これらの問題に対応するため、報酬特例制度が導入されました。

この制度により、不動産業者は空き家の現地調査費用などを報酬に含めることができ、低廉な物件の取引を積極的に行えるようになります。

これにより、空き家の流通が促進され、地域の環境改善が期待されます。

特例を活用することでどのような効果が得られるか?

報酬特例の活用により、以下のような効果が期待できます。

まとめ
  1. 空き家の流通促進: 報酬額の引き上げにより、不動産業者は低廉な空き家の売却を積極的に行えるようになります。これにより、空き家の流通が活性化し、地方の空き家問題の解決に寄与します。
  2. 業者のモチベーション向上: 現地調査やその他の費用を報酬に含めることで、不動産業者が赤字を回避し、ビジネスを継続しやすくなります。これにより、空き家の取り扱いに対する意欲が高まります。
  3. 地域活性化: 空き家が売却されることで、地域の景観や治安の改善が期待されます。これにより、地域全体の価値が向上し、住みやすい環境が整います。
  4. 負担軽減: 売主にとっては、長期間空き家を維持するための固定資産税や維持管理費の負担が軽減されるとともに、空き家の管理や売却に伴うストレスが軽減されます。

このように、報酬特例制度は空き家問題の解決に向けた有効な手段であり、地域社会の発展や不動産業界の活性化に寄与しています。

制度の詳細を理解し、適切に活用することで、空き家問題の改善に向けた一歩を踏み出しましょう