専属専任媒介契約とは?一般媒介・専任媒介との違い、選び方、メリット・デメリットを解説

専属 専任 媒介


この記事を書いた人
小島 優一
宅地建物取引士

宅地建物取引士、2級ファイナンシャルプランニング技能士。生命保険会社にてリテール業務に従事した後、2014年に不動産仲介会社であるグランドネクスト株式会社を設立。 2021年より幻冬舎ゴールドオンラインにて不動産を通じて財産を守る、増やす、残す記事を連載している。 >> 詳細はこちらから

この記事のまとめ
  • 一般媒介・専属専任媒介・専任媒介契約を解説
  • それぞれの契約様態の違いを解説
  • 3つの種類の媒介契約のメリット・デメリットを紹介

不動産の売買において避けて通れない「媒介契約」は、取引の成功に大きな影響を及ぼします。媒介契約には、一般媒介契約、専任媒介契約、そして専属専任媒介契約の3つがあり、それぞれの違いや特長、仲介手数料、契約期間に関する注意点があります。しかし、これらの違いを理解しないまま契約を結ぶと、思わぬトラブルに巻き込まれることも少なくありません。特に、違約金や契約解除の条件については、しっかりと把握しておくことが重要です。

この記事では、各媒介契約の具体的な内容や、それぞれのメリット・デメリットを明確に解説します。また、どの契約形態があなたに最適なのかを判断するためのポイントも紹介します。

買い手にとっても、自分に合った契約を選ぶことが成功への鍵となります。

小島解説員小島解説員

山口編集者山口編集者

しっかりとした知識を身につけ、自信を持って不動産取引を進めていきましょう。

そもそも「媒介契約」とは何?

不動産取引において、媒介契約は仲介業者と依頼者(売主または貸主)の間で結ばれる契約です。

この契約により、仲介業者は物件を売却または賃貸するための活動を行う権利を得ます。

媒介契約は主に3種類に分けられ、それぞれの契約形態に応じた役割や義務があります。

媒介契約の定義

「媒介契約」とは、不動産を売りたい人と、売却を仲介する不動産会社との間で結ばれる契約です。

この契約により、不動産会社は売却活動を行う権限を得て、売主の代理として市場での販売を進めます。

媒介契約には、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類がありますが、これらは契約の内容や条件によって異なります。

不動産取引における役割

媒介契約を結ぶことで、不動産会社は以下のような役割を果たします。

小島解説員小島解説員

査定と販売戦略の立案不動産会社は、物件の市場価値を査定し、最適な販売価格を提案します。また、販売戦略を立てて効率的に物件を売却するための計画も練ります。

広告活動の実施:不動産会社は、物件を広く知ってもらうために広告を行います。これにはインターネット広告、チラシ、オープンハウスの開催などが含まれます。

買主との交渉売主に代わって買主と交渉を行い、条件を調整します。これにより、売主が有利な条件で売却できるようサポートします。

契約手続きのサポート売買契約書や重要事項説明書など、専門的な書類を作成・確認し、取引がスムーズに進むように配慮します。

山口編集者山口編集者

媒介契約を結ぶことで、これらのサポートを受けられるんですね。

媒介契約の3形態の特徴

不動産の売買や賃貸を進める際には、媒介契約が不可欠です。

媒介契約には主に「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3つの形態が存在し、それぞれに特有のルールや特徴があります。

これらの契約形態を理解することで、自分のニーズに最適な選択をすることができ、スムーズな取引を実現できるでしょう。

以下では、それぞれの媒介契約について詳しく解説していきます。

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専属専任媒介契約とは

専属専任媒介契約は、売主が特定の不動産会社1社に売却を独占的に依頼する契約です。

この契約では、売主は他の不動産会社に重複して依頼できないだけでなく、売主自身で購入希望者を見つけても、不動産会社を通じて取引を行い、仲介手数料を支払う必要があります。

加えて、不動産会社は5営業日以内にレインズに物件情報を登録し、週1回以上の進捗報告義務があります

積極的な売却活動が期待できる一方で、売主の自由度が制限される側面があります。

専任媒介契約とは

専任媒介契約は、売主が不動産会社1社に売却を依頼する契約で、他の不動産会社に重複して依頼することはできません。

しかし、売主自身で購入希望者を見つけた場合には、直接取引が可能です。

不動産会社は7営業日以内にレインズに物件情報を登録し、2週間に1回以上の報告義務があります。

この契約では、不動産会社のサポートを受けながらも、売主が自ら積極的に購入希望者を探す自由度がある点がメリットです。

一般媒介契約とは

一般媒介契約は、複数の不動産会社に同時に売却を依頼できる契約です。

売主自身が購入希望者を見つけて直接契約することも可能ですし、不動産会社の仲介を複数利用して物件を広く紹介することができます。

しかし、レインズへの登録や報告義務はなく、各不動産会社が積極的に動くかどうかは不透明です。

このため、専属専任媒介や専任媒介に比べて売却活動の優先度が低くなる可能性がデメリットです。

専属専任媒介契約のメリット・デメリット

ここでは、専属専任媒介契約の具体的なメリットとデメリットについて詳しく見ていきましょう。

山口編集者山口編集者

買い手にとって損のない取引となるよう、メリット・デメリットを確認してくださいね。

専属専任媒介契約のメリット

積極的な営業活動を期待できる

専属専任媒介契約では、不動産会社が他社との競争を気にせず、集中して営業活動を行うため、売却活動に注力してもらえます

売主自身で購入希望者を探すことができないため、不動産会社の営業が無駄になることもなく、安心して任せることができるでしょう。

特典を受けられる可能性がある

専属契約を結ぶことで、物件の売却がスムーズに進むことを前提に、不動産会社から買取り保証や瑕疵保証といったサービスが提供されることがあります。

頻繁な報告義務

専属専任媒介契約では、不動産会社が1週間に1回以上の報告を行う義務があり、進捗状況をこまめに把握できる点がメリットです。

山口編集者山口編集者

売却活動の状況を定期的に確認できるので、安心ですね。

専属専任媒介契約のデメリット

自分で買主を見つけることができない

この契約では、売主自身で購入希望者を探すことができないため、不動産会社に完全に依存することになります。

自分で知人や他の購入者を見つけたとしても、必ず不動産会社を通して取引を行う必要があり、仲介手数料を支払わなければなりません。

営業のスピードが低下する可能性

専属専任媒介契約を結ぶことで、他社との競争がなくなるため、不動産会社がスピーディーに営業活動を進めない可能性があります。

囲い込みのリスク

不動産会社が他の業者からの購入希望者を遮断する「囲い込み」のリスクが存在します

これは、仲介手数料を両方から得ることを狙い、他社の取引を妨げる行為です。

結果として、売却の機会が損なわれる場合があります。

専任媒介契約のメリット・デメリット

ここでは、専任媒介契約の具体的なメリットとデメリットについて詳しく見ていきましょう。

専任媒介契約のメリット

連絡のスムーズさ

専任媒介契約は、1社とだけ契約を結ぶため、連絡の窓口が明確になり、やり取りが簡単になります

複数の不動産会社に連絡する必要がないため、手間が省け、ストレスなく進行できます。

営業活動の把握が容易

この契約では、不動産会社が2週間ごとに営業活動の報告を行う義務があります。

そのため、売却や賃貸の進捗状況を定期的に確認でき、タイミングを計りやすくなります。

自分自身の営業活動も可能

専任媒介契約では、自身の顧客に対しても営業を行うことができます。

依頼主が買主や借主を見つけた場合、仲介手数料を不動産会社に支払う必要がないため、コストを抑えることが可能です。

専任媒介契約のデメリット

担当営業マンの力量に依存

専任媒介契約を結んだ不動産会社の営業マンのスキルに大きく影響されます。

力量が不足している場合、適切な買主や借主を見つけられず、長期間待たされる可能性があります

契約期間中の会社変更が不可

専任媒介契約の上限期間は3か月という規定のため、通常3か月間の媒介契約を締結します。

そのため不動産会社に見込客すら挙がらない事態になったとしても、契約期間中は不動産会社の変更をすることはできません。

そのため、契約中に不動産会社に期待する見込客が挙がらなくても、他の不動産会社に変更することができず、フラストレーションが溜まる場合があります。

一般媒介契約のメリット・デメリット

ここでは、一般媒介契約の具体的なメリットとデメリットについて詳しく見ていきましょう。

一般媒介契約のメリット

競争心の醸成

一般媒介契約では、複数の不動産会社と同時に契約を結ぶことができるため、各社間での競争が生まれます

売買契約や賃貸借契約が成立した不動産会社にのみ仲介手数料を支払う仕組みになっているため、各社がより積極的に営業活動を行うよう促されます。

自己発見取引によるコスト削減

この契約形態では、依頼主自身が買主を見つけた場合、仲介手数料が発生しないか、減額される可能性があります。

これにより、自己発見取引を通じて経済的なメリットを享受することができます。

物件情報の非公開性

一般媒介契約では、レインズへの登録義務がないため、物件情報が広く公表されることはありません

これにより、プライバシーを重視する依頼主にとっては安心感があります。

一般媒介契約のデメリット

契約成立までの時間がかかる可能性

複数の不動産会社が同時に関与するため、依頼した会社の中に競争相手が多い場合、逆に営業活動が消極的になることがあります。

特に、得意でないエリアやジャンルの物件を依頼した場合、契約成立までの時間が長引く可能性が出てきます。

個別確認の手間

一般媒介契約は、各不動産会社に営業活動の報告義務がないため、依頼主自身が個別に進捗を確認しなければなりません。

これらは、報告を義務としている専属専任媒介や専任媒介とは違い、買い手には手間がかかる部分と言っていいでしょう。

情報拡散の難しさ

レインズへの登録義務がないため、登録しなければ物件情報が広く周知されない可能性があります。

その結果、販売機会を逃すことや、興味を持つ買主に情報が届かないリスクがあることに留意する必要があります。

専属専任媒介との違いは?

一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約の違いを宅建業法上の観点とメリット・デメリットの観点で解説します。

一般媒介契約と専属専任媒介の違い

宅地建物取引業法上の観点から、それぞれの態様の違いを下表にまとめました。

  一般媒介契約 専任媒介契約 専属専任媒介契約
複数の業者と契約 × ×
依頼主が買主を探す取引 ×
レインズ登録 任意 必須 必須
業者からの途中報告義務 × 2週間に1度 1週間に1度
媒介契約期間 任意 3か月の上限 3か月の上限

メリット・デメリットの違い

それぞれの媒介契約における違いを下表にまとめます。

媒介契約の種類 メリット デメリット
一般媒介契約 ①複数の不動産会社に依頼できるため、競争心を煽れる。
②自分で買主を見つけた時は、仲介手数料が無料か減額できる。
③物件情報が公にならない
①期間が定められていないため、契約までに時間がかかる可能性
②進捗状況について、依頼した業者へ個別に聞く必要がある。
③物件情報が広まりにくい。
専任媒介契約 ①窓口が1社のため、状況確認、連絡がスムーズ。
②業者から進捗情報の報告が必ずある。
③自身でも営業活動をすることができます。
①担当営業マンの手腕に左右される。
②3か月間は、不動産会社を変更できない。
③囲い込みをされる可能性がある。
専属専任媒介契約 ①窓口が1社のため、状況確認、連絡がスムーズ。
②業者から進捗情報の報告が必ずある。
③期間が定まっているため積極的に営業活動をする可能性が高い。
④買取り保証や瑕疵保証サービスなどの特典があることも
①担当営業マンの手腕に左右される。
②3か月間は、不動産会社を変更できない。
③自身で買主を探すことはできない。
④他社・依頼主との競争が無くなる。
⑤囲い込みされる可能性がある。

どの媒介契約を選ぶべきか?自分に合った選び方

専属専任媒介契約、専任媒介契約、一般媒介契約のそれぞれには独自の特徴やメリット・デメリットがあります。

自分のニーズや取引の目的を明確にすることで、最適な契約を選びましょう。

小島解説員小島解説員

自分のニーズを整理する

媒介契約を選ぶ際には、まず自分のニーズや状況を整理することが重要です。

まずは、売却や賃貸を考えている物件の種類、希望する販売価格、売却までの期間、そして営業活動の頻度などを書き出してみましょう。

専属専任媒介が向いているケース

自分では営業活動を行う時間や余裕がない、もしくは不動産会社にしっかりとした営業を期待しているという方には、専属専任媒介契約が向いています。

この契約では、特定の不動産会社が専任で営業活動を行い、定期的な報告も受けられます。

次に特典や保証サービスを受けたい場合も、専属専任媒介契約が適しています

買取り保証や瑕疵保証が提供されることが多く、取引におけるリスクを軽減できます。

一般媒介契約が適しているケース

自分で売主や借主を見つける自信があるか、もしくは複数の不動産会社に依頼したい方には、一般媒介契約が適しています。

競争が生まれることで、より良い条件での契約を引き出す可能性があります。

次に仲介手数料を減額したり、自己発見取引を利用したい方にとっても、一般媒介契約は有利です。

また、物件情報を広く公開したくない場合にも適しています。

自分の状況や希望に応じて、これらの契約形態を慎重に検討し、最適な選択を行いましょう。

媒介契約にまつわる注意点

媒介契約は不動産取引における重要な要素ですが、その契約内容や運用方法にはさまざまな注意点があります。

特に契約違反のリスクや仲介手数料に関する理解不足がトラブルを引き起こすことがあるため、事前にしっかりとした知識を持っておくことが大切です。

山口編集者山口編集者

ここでは、媒介契約に関連するリスクや注意事項を詳しく解説し、安心して取引を進めるためのポイントを紹介していきます。

契約違反のリスク

媒介契約を結ぶ際には、契約内容に従わないことによる違約金のリスクが存在します。

特に、売主が専任媒介契約や専属専任媒介契約の期間中に、他の不動産会社を通じて売買契約を成立させた場合、仲介手数料に相当する金額の違約金を請求される可能性があります。

また、専属専任媒介契約中に自分で買主を見つけた場合も、契約違反と見なされるため、慎重に選択することが重要です。

自己発見取引の可能性がある場合は、より柔軟な専任媒介契約を選ぶのが良いでしょう。

仲介手数料についての注意点

仲介手数料は不動産取引において重要な費用であり、その計算方法や支払いタイミングについても十分な注意が必要です

一般的には、仲介手数料は取引価格の一定割合として設定されますが、各不動産会社によって異なるため、自分の取引条件に合った手数料を事前に確認し、納得の上で契約を締結することが重要です。

さらに、仲介手数料は、媒介契約解除時にも考慮すべき重要な要素です

特に、売主の都合で契約を解除する際、広告費や交通費など、実際にかかった費用が請求される場合があります。

一般媒介契約では、契約解除が比較的容易ですが、専任や専属専任媒介契約の場合は、その契約期間中に解除すると追加の費用が発生するリスクがあります。

不動産会社に明らかな問題がある場合を除き、売却を取りやめる可能性があるなら、一般媒介契約を検討することが賢明です。

契約内容をよく理解し、トラブルを避けるために十分な情報を収集することが大切です。

まとめ

今回は、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の特徴や、それぞれのメリット・デメリット、さらには違いについて詳しく解説しました。

一般媒介契約は、複数の不動産会社に営業を依頼しつつ、自分でも営業活動を行いたい方に最適な選択肢です。

この契約方式では、多角的に営業を進めることができるため、自己のニーズに合わせた販売戦略を立てやすいと言えます。

ただし、複数の不動産会社が十分に営業活動を行わない可能性があることも理解しておくべきです。

特に、物件の立地や価格帯によっては、期待するような積極的なアプローチが得られないことがあります。

高額物件や好立地の物件であれば、より多くの不動産会社が動いてくれる可能性が高いですが、そうでない場合は注意が必要です。

そのため、物件の特性を考慮しながら、自身の希望価格に近づけるための最適な媒介契約を選択することが重要です。

短期間で売買契約や賃貸借契約に至るために、自分に合った契約方式を検討しましょう。