中古マンションの引き渡しが半年後!トラブルはある?契約から引き渡しまでの流れも説明!


この記事を書いた人
小島 優一
宅地建物取引士

宅地建物取引士、2級ファイナンシャルプランニング技能士。生命保険会社にてリテール業務に従事した後、2014年に不動産仲介会社であるグランドネクスト株式会社を設立。 2021年より幻冬舎ゴールドオンラインにて不動産を通じて財産を守る、増やす、残す記事を連載している。 >> 詳細はこちらから

中古マンションの購入を検討している方にとって、契約から引き渡しまでの期間は大きな関心事です。しかし、予定よりも引き渡しが半年以上遅れるケースもあり、不具合やトラブルに直面する可能性があります。引き渡し後に発覚する問題や、長期間にわたる待機が引き起こすリスクを未然に防ぐためには、どのような注意点が必要なのでしょうか?

この記事では、なぜ中古マンションの引き渡しが長引くのか、その理由や流れを詳しく解説します。また、長い引き渡し期間に伴うリスクや、それを回避するための対処法についても具体的に紹介します。特に、売主との交渉ポイントや契約時に確認すべき事項について知ることで、安心して取引を進められるでしょう。

山口編集者山口編集者

マンション購入を検討している方や、引き渡しまでに不安を抱える方は、ぜひ最後までお読みください。

中古マンション引き渡しにかかる平均期間

中古マンションの引き渡しには、物件や状況によって異なりますが、一般的に約1ヶ月から2ヶ月程度かかります。

これは、住宅ローンの手続きや引き渡し準備、売主の引越しなど、いくつかの要因が絡むためです。

特に、空室の物件では比較的短期間で引き渡しが行えることが多く、2ヶ月程度が目安となります。

しかし、居住中の物件の場合は、売主が新居に引っ越すための準備が必要となり、3ヶ月程度かかることも珍しくありません。

これは、売主が退去した後に、清掃や修繕が必要な場合もあるためです。

また、住宅ローンを利用する場合、ローン審査に約1ヶ月程度かかることがあります。

そのため、契約から引き渡しまでの期間を1ヶ月半以上見込んでおくことが大切です。

さらに、売主が住宅ローンを利用している場合、抵当権の解除手続きに時間がかかることもあります。

この手続きには、金融機関と調整を行い、14営業日程度かかることがあります。

そのため、売主が居住している場合や抵当権が設定されている場合は、引き渡しまでにさらに時間がかかることがあります。

小島解説員小島解説員

中古マンション引き渡し日の決め方

中古マンションの引き渡し日は、売主と買主が協議して決定する重要な日程です。

契約時点で売買契約書に記載されるものの、その前に双方の都合を十分に調整しておくことがスムーズな取引につながります。

空室の物件では比較的短期間で引き渡し日を設定できる場合が多いですが、売主が居住中の物件では引越し準備や新居への移動スケジュールが絡むため、調整に時間がかかることがあります。

特に、売主が転居先の契約や工事を並行して進めている場合、引き渡し日が後ろ倒しになる可能性も考慮する必要があります。

また、引き渡し手続き当日は、売主と買主のほか、不動産会社の担当者や司法書士が同席し、住宅ローンを利用する場合は金融機関の手続きも伴います。

そのため、引き渡し日は金融機関の営業時間内(平日の日中)に設定するのが一般的です。

会社員の売主や買主は、休暇を確保して予定を調整する必要がある場合も少なくありません。

中古マンションの引き渡しが半年以上かかる理由

中古マンションの引き渡しが半年以上かかる場合、さまざまな理由が考えられます。

これらの要因が重なることで、予定よりも長期間の引き渡しが必要になることがあります。

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引き渡しが半年以上かかる主な理由を見て行きましょう!

売主の引っ越し先が決まっていない

売主が引っ越し先をまだ決めていない場合、引き渡しまでにかなりの時間がかかることがあります。

特に、売主が新しい住まいを購入しようとしている場合、引越し先の選定に時間がかかることが多いです。

また、子供の転校が絡むケースがあれば、引っ越しのタイミングが非常に重要になります。

転校先の学校の手続きや学期のタイミングを調整するために、引き渡しが半年以上遅れることもあります。

さらに、売主が他の地域への転居を検討している場合や、引っ越しのタイミングを調整している場合も、同様の理由で引き渡しが遅れることがあります。

このように、生活環境を整えるのに時間がかかる場合、予定通りの引き渡しが難しくなることがあります。

売主の新居が完成していないから

売主が新築物件への引越しを予定している場合、その新居の完成が遅れることが引き渡しの遅延を招く一因となります。

新築マンションや一戸建てが予定よりも工期が長引くことがあります。

この場合、売主は新居の完成を待ってから引越しを行うため、その引越しが完了するまで中古マンションの引き渡しができません。

特に、売主が購入した新築物件の引き渡しがスムーズに行かない場合、引き渡しが半年以上延びることも考えられます。

引き渡しの許可が出ていないから

中古マンションの引き渡しが許可されるまでには、時に予期しない手続きが必要になることがあります。

特に、物件に差し押さえが入っている場合、引き渡しには裁判所の許可が求められることがあります。

この場合、差し押さえを解除し、裁判所の許可を得るために数ヶ月の時間がかかることがあり、引き渡しが遅れる原因となります。

裁判所の許可が下りるまで、物件の引き渡しは行えません。

また、売却後に代金が納付されても、売主が合意した引き渡しを行わない場合、法的措置が取られることもあります。

引渡命令が出されることで強制的に物件の引き渡しが行われることもありますが、その手続きが完了するまでに時間がかかる場合があります。

特に、売却に許可が必要な状況や差し押さえ解除のための手続きが絡むと、引き渡しが予定よりも遅れることが避けられません。

中古マンションの引き渡しが長い時のトラブル

中古マンションを購入する際、契約から引き渡しまでの期間が半年以上になることがあります。

このような長期化にはいくつかのリスクが伴います。

引き渡しが遅れることで、物件の状態が悪化したり、金銭的な問題が発生したりする可能性があります

ここでは、引き渡しが長期化する場合に直面するリスクをいくつか見ていきましょう。

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内見の時より室内が汚くなる

中古マンションの引き渡しが長引く場合、最も大きなリスクの一つが「室内が汚れてしまう」という問題です。

一般的な売買契約では、引き渡し前に室内の掃除を行う義務はありません。

そのため、物件が長期間空いていると、自然と室内が汚れたり、傷がついたりすることが避けられません。

例えば、引き渡しまでに半年以上の時間がかかると、居住者がいない間にホコリや汚れが溜まり、特に壁紙や床の傷、カビなどが発生する可能性があります。

これらの汚れについて、契約時に買主が確認していなければ、そのまま引き渡しが行われることになります。

もし、売主が掃除を行った場合でも、買主が満足するレベルでないことが多く、後に「掃除が不十分」としてトラブルになる可能性があります。

手付金を使い込まれる

契約時に支払う手付金は、売主と買主の双方にとって重要な契約の証拠となります。

しかし、引き渡しまでに期間が長くなると、売主が手付金を使い込むリスクが存在します。

特に、売主が経済的に困窮していたり、急な事情で手元資金を必要としていた場合、手付金を使い込んでしまうケースが考えられます。

売主の都合で引き渡し日が遅れたり、キャンセルされる危険

半年という長い期間の中で、売主にとって予期せぬ環境変化が発生する可能性は否めません。

家庭内の事情や健康問題、経済的な状況の変化など、売主自身では回避しきれない事態が生じることもあり得ます。

売主の都合によって引き渡し日が遅れたり、最悪の場合、キャンセルされるリスクがあります。

売主にとって予期せぬ事態が発生すると、契約通りに物件を引き渡すことが困難になることがあります。

例えば、売主が重い病気で長期入院を余儀なくされたり、急な家族の事情でお父様が倒れ実家を継ぐことになった場合、売主は自分の予定通りに引き渡しを行うことができません。

また、契約者が突然亡くなったり、会社の倒産や解雇により急な経済的な困難に直面した場合、売主が物件の売却を中止することもあり得ます。

引き渡しの期間が長い場合の事前にできるリスク対処法

不動産の引き渡し期間が長期にわたる場合、買主にとって予期せぬリスクが生じる可能性があります。

これを防ぐためには、事前に適切な対処法を講じることが重要です。以下にその具体的な方法を解説します。

売主に引き渡しの期間が長い理由を確認する

まず、売主に対して引き渡しの期間が長くなる理由を確認することが大切です。

売主の転居先がまだ決まっていない、資金調達に時間がかかっている、あるいは物件の修繕が必要であるなど、具体的な理由を把握することでリスクを評価できます。

理由が曖昧な場合や納得できない場合は、他の条件交渉や契約の見直しを検討する必要があります。

特に、売主の個人的な事情や計画が不明確な場合、買主にとって不利な状況に陥る可能性があるため、注意が必要です。

事前に特約を定める

長期間の引き渡しに伴うリスクを軽減するためには、契約書に特約を設けることが有効です。

たとえば、引き渡しの遅延が生じた場合の違約金や、天災や売主の事情による契約キャンセル時の対応を明確にしておくことが挙げられます。

特に、引き渡し前の物件が災害や損傷を受けた場合の責任範囲を取り決める「引渡し完了前の滅失・損傷条項」を契約に含めると安心です。

また、売主が物件の管理を怠った場合の補償も盛り込むことで、買主のリスクを最小限に抑えることが可能です。

契約不適合責任を行使するために内見をしっかり行う

契約不適合責任を行使するためには、引き渡し前の内見をしっかり行い、物件の状態を詳細に確認することが重要です。

具体的には、壁や床の傷、設備の不具合、構造上の問題など、気になる点を事前に把握して記録に残しておくべきです。

内見の際には、専門家の同伴や詳細な写真撮影を活用して、後日問題が発生した場合に証拠として活用できるよう準備しておくことも推奨されます。

さらに、売主に対して修繕や補修が必要な箇所を正式に通知し、引き渡しまでに対応してもらうよう交渉することで、問題を未然に防ぐことが可能です。

中古マンションの契約から引き渡し日までの流れ

中古マンションを購入する際には、物件の購入申し込みから最終的な引き渡しに至るまで、いくつかの重要なステップを踏む必要があります。

この流れを事前に把握しておくことで、スムーズな取引が可能になります。本記事では、その具体的な流れを解説します。

1: 物件の購入申し込み

購入したい中古マンションが決まったら、不動産会社を通じて購入申込書(買付証明書)を提出します。

この書類は、売主に購入の意思を示す重要なステップです。

購入申込書の提出と同時に、価格や引き渡し日などの条件交渉が始まります。

この交渉は不動産会社が仲介するため、買主と売主が直接やり取りする必要はありません。

ただし、購入希望者が複数いる場合、条件交渉の結果や事前審査の有無によって購入の優先順位が変わることがあります。

早めに住宅ローンの事前審査を済ませておくと、購入意思の信頼性が高まり、交渉を有利に進められる可能性があります。

2: 売買契約

購入申込が通った後、売買契約を正式に結びます。

このプロセスは通常、購入申込の1週間–2週間以内に行われます。

売買契約で行われる主な手続き
  • 重要事項説明:宅地建物取引士が物件や取引条件について詳しく説明します。
  • 売買契約書への署名捺印:契約内容を双方で確認し、正式に締結します。
  • 手付金の支払い:物件価格の約10%が一般的です。

契約当日に必要なものとして、実印、本人確認書類、手付金、印紙代(物件価格に応じた額)などがあります。

事前に必要書類を確認し、準備を整えましょう。

3: 手付金の支払い

売買契約の締結時に支払う手付金は、契約を成立させるための保証金のような役割を果たします

通常は物件価格の10%前後が相場ですが、具体的な金額は契約条件によって異なります。

手付金に関する注意点
  • 手付金を支払うことで、物件の購入意思を正式に示します。
  • 契約解除の場合、手付金が返金されないことがあります。

手付金の支払いは重要なステップであり、資金計画を十分に考慮する必要があります。

4: 住宅ローン審査と契約

売買契約が完了したら、住宅ローンの本審査を行います。

本審査では、買主の収入や借入金額、物件の担保価値などを基に融資可否が判断されます。

本審査に必要な書類
  • 源泉徴収票または確定申告書
  • 売買契約書
  • 住民票
  • 印鑑証明書

審査結果は通常1–2週間程度で出ます。

本審査に通過したら、金銭消費貸借契約(ローン契約)を結び、融資実行日を決定します。

この日程は物件の引き渡し日に合わせるのが一般的です。

5: 物件の引き渡し

決済と同時に物件の引き渡しが行われます。

引き渡し当日は売主、買主、不動産会社、金融機関担当者、司法書士が一堂に会し、以下の手続きを進めます。

当日の主な手続き
  • 売買代金の残金決済
  • 固定資産税や管理費の精算
  • 所有権移転登記の手続き
  • 鍵や関連書類の受け渡し

これらの手続きが完了した時点で、物件の所有権が正式に移転します。

その後、引っ越しや新生活の準備を始めることができます。

登記の完了は1–2週間かかる場合がありますが、これをもって物件の購入手続きがすべて完了となります

すぐに引っ越したい時の対処法

「すぐに引っ越したい」と考えている場合には、物件選びの段階から特定の条件に注目することが重要です。

売主の状況や物件の特性を確認し、スムーズな取引が可能な物件を選びましょう。

売主が居住していない中古マンションを探す

売主がすでに物件から退去している場合、契約成立後の引き渡しまでの期間が短くなることが一般的です。

居住中の物件では引っ越しや片付けに時間がかかることがありますが、空室の物件であればそのような手間が省けます。

不動産会社に事前に売主の状況を確認するよう依頼し、空室物件を優先的に探しましょう。

売主が業者の中古マンションを探す

売主が個人ではなく、不動産会社や投資家などの業者である場合もスムーズな引き渡しが期待できます。

業者が売主の場合、契約後の準備が迅速に進むことが多いため、早めの引っ越しが可能です。

また、物件のリフォームやクリーニングが完了している場合が多い点も利点です。

不動産ポータルサイトやエージェントに、売主が業者である物件を探してもらうとよいでしょう。

まとめ

中古マンションの引き渡しまでの期間が長くなる場合、契約から引き渡しまでのスケジュール調整が難しくなり、思うように引っ越しのタイミングを決めることができなくなります。

このような状況では、思い通りのタイミングで新しい家に住むことが難しく、場合によっては引っ越し先の物件が手に入らなかったり、引き渡しが遅れることで経済的な負担が大きくなる可能性もあります。

また、引き渡しまでの期間が長い物件は、室内が汚れてしまうリスクや、引き渡しが遅れたりキャンセルされるリスクもあるため、引き渡しまでの期間が短い物件を選ぶことが賢明です。

事前に引き渡し日の確認や、リスク対策をしっかりと講じておくことが、安心して住み替えを進めるために重要です。

もしすぐに引っ越したい場合は、売主が居住していない中古マンションや業者の物件を選ぶことで、引き渡しの遅延を避けることが可能です。