- 中古住宅の値下がり時期は売り出し開始から3~6ヶ月目!
- 中古住宅の値下げ交渉で強気な売主への対処法
- 値下げ交渉で失敗しないための交渉術と値下げの限界とは?
渡邊編集者
小島解説員
中古住宅の値下がりしやすい時期を知っておくことで、より安く物件を購入できる可能性があります。
ただし、必ずしも値下げ交渉が成功するわけではありません。強気な売主に対しては交渉が難航することもあるため、失敗するパターンや成功確率を上げる方法を事前に勉強しておくことも重要です。
本記事では、中古住宅の値下がりしやすい時期や、売主が強気なケースでどのくらい値切れるかといった対処法、値下げ交渉できる金額の限界、適切なタイミングについて詳しく解説します。
小島解説員
中古住宅の値下がり時期はいつ?
中古住宅の値下がり時期は毎年一定のパターンがあります。
不動産の需要が高まった後の閑散期に入る前が、値下がりしやすい時期です。また、物件ごとに値下がりしやすいタイミングがあるため、それを把握しておくことでスムーズに交渉できるかもしれません。
本記事では、中古住宅の値下がり時期とそのタイミングについて詳しく解説しますので、参考にしてください。
売り出し開始から3〜6ヶ月目
売り出しから3〜6ヶ月ほど経過した物件は、値下げ交渉が成功しやすいです。
不動産は一品もののため、条件が良く需要の高い物件であれば、購入希望者がすぐに現れ、1ヶ月以内に売れることもあります。
さらに、不動産業者にとっては、広告掲載が長引いたり媒介契約期間が終了し売主が他の業者に移る可能性があるため、デメリットがあります。したがって、売り出しから3〜6ヶ月経過した物件は、値下げ交渉に応じる可能性が高くなると言えるでしょう。
小島解説員
人の移動が増える時期(3月後半から4月)
また、シーズン的な動きとして、不動産取引が活発化する時期の終わりである3月後半から4月にかけても中古住宅の値下がりが期待できる時期です。
1月から3月は新年度が始まる前で不動産の需要が高まるため、売主にとっては売却のチャンスとなります。しかし、この時期を逃すと売れにくくなるため、売主はなるべく需要が高いうちに売りたいと考えます。
値下げ交渉に対して売主が強気のケースとは?
渡邊編集者
小島解説員
- 築浅のきれいな中古物件
- そもそも値下げする気がない
- 早期売却が目的ではない
中古住宅の築年数が浅い
築年数が浅い物件の場合、売主が値下げ交渉に応じないことがあります。
築年数が浅い物件は建物の価値が高く、人気もあるため、売主は「値下げしなくても売れる」と考えることが多いです。中古住宅の価格設定において築年数は重要な要素であり、築年数が古くなるほど価値が減少する傾向があります。
また、住宅は減価償却資産として、年数の経過とともに価値が目減りします。
「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」によると、以下のように住宅の耐用年数は造りによって異なります。
建物の造り | 耐用年数 |
木造 | 22年 |
軽量鉄骨造 | 27年 |
鉄骨造 | 34年 |
鉄筋コンクリート | 47年 |
出典:別表第一 機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表
出典:別表第一 機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表
例えば、木造住宅の場合、耐用年数が22年とされています。新築から22年を超えても問題なく住むことができても、その価値はほとんど無いと見なされるのです。
次のグラフを見れば、築15年を過ぎたあたりから価値が急激に下がることがわかります。
築20年以上の物件は、価値が大幅に減少するため、値下げしてでも売却したほうが良いとされます。
一方、築浅の物件は、価値が半減するまでに時間があり需要もあるため、売主は「値下げせずとも買い手が見つかる」と考えることが多いです。
値下げを考慮していない
売主の中には、初めから値下げを考えない価格設定をしている人もいます。
不動産の価格設定には特に決まったルールはなく、不動産会社と売主の相談によって決定されます。一部の売主は、値下げ交渉を見越して相場よりも高めの価格設定をすることがありますが、逆に交渉が面倒で最初から値下げできる目いっぱい下げた価格で売りに出すケースもあります。
小島解説員
早期売却が目的ではない
前章で「売主はなるべく早く売却する方がメリットがある」と説明しましたが、早期売却を目的としない売主もいます。
3ヶ月以上売れ残っている物件であっても、値下げ交渉に応じない場合、早期売却が目的ではない可能性があります。
例えば、終活の一環として自宅を手放す場合、物件がすでに耐用年数を超えていることが多く、急ぐ必要がないため、希望の価格での売却を目指すことがあります。
そのため、早期売却を急がない売主に対する値下げ交渉は、簡単ではないかもしれません。
値下げ交渉できる金額の限界と適切なタイミングとは?
中古住宅の値下げ交渉には金額の限度があります。過度な値引き要求は、売主との関係が悪化する可能性があるため、適切な範囲で交渉することが重要です。
渡邊編集者
値下げは相場価格の10%が限界
一般的に、中古住宅の値下げ交渉における金額の限界は、相場価格の10%(1割)程度と言われています。
例えば、2,000万円の物件であれば約200万円、3,000万円の物件では約300万円程度が値引きの相場です。
ネット上では500万円や2000万円の値引き等、話題性のある事例が取り上げられますが、実際は稀なケースです。
あらかじめ相場を調べておくことで、値下げ交渉がしやすくなります。気に入った物件が相場よりも高い場合は、その相場を根拠に値下げ交渉を行うと良いでしょう。
ただし、リノベーションが施されていたり特別な事情がある場合は、物件価格の10%が値引きの限界として考えておくと良いでしょう。
値下げ交渉の相場や限界については、以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひご参考にしてください。
成功しやすいのは端数切りの提案
10%が値下げの限界とされていますが、過度な値下げ要求は逆に売主が売却をためらう原因になることもあります。
値下げ交渉を成功させるためには、端数を含む提案が効果的です。
例えば、2,550万円の物件であれば、50万円の値下げ交渉を提案することで、売主も応じやすくなる可能性が高いです。
交渉のベストタイミングは購入申込時
値下げ交渉を行うタイミングは、物件の購入申し込みをする段階が最も効果的です。
売主の立場を考えると、内覧時にいきなり「値下げできますか?」と聞かれると、多くの売主は「物件の良さも見ずに金の話か」や「値下げの可能性を探っているのか?」と疑問に思うことが多いでしょう。
小島解説員
売主は、購入の意思が明確な人に対してのみ値下げを検討する傾向があります。
]そのため、購入申し込み書に「3,000万円で購入を希望します」など、値下げの希望を明記することで、売主にとっても判断しやすく、値引き交渉がまとまりやすくなります。
売主が「個人」か「法人」かで変わる値下げへの考え方
渡邊編集者
小島解説員
売主が個人の場合
個人の場合、売却までのスケジュールが決まっていることが多く、値下げに応じやすい傾向があります。
多くの個人売主は、マイホームを手放す理由として子供の進学、転職、転勤、離婚、終活など、ライフイベントが関わることが少なくありません。
これらのライフイベントは期限が決まっていることが多く、計画的に売却を進めたいと考えている売主が多いのです。
例えば、年末に翌年4月の転勤が決まった場合、約3ヶ月で自宅の売却を進めなければなりません。もし4月までに売却できなかった場合、以下のようなデメリットが生じることがあります。
- 住宅の買い替えで二重ローンが発生する
- 賃貸物件を一時的に借りる必要がある
- 内覧や契約のたびに移住地から訪れる必要がある
これらの金銭的および時間的な負担は大きく、非効率です。そのため、売却スケジュールが決まっている場合は、値下げ交渉に応じやすくなるでしょう。
売主が法人の場合
業者が売主となるケースでは、中古物件を買い取り、リフォームやリノベーションを施して再販することが一般的です。また、稀に新築から1年経過した建売住宅が中古住宅扱いで販売されることもあります。
業者の場合、物件の維持費、販売広告費、税金などのコストがかかるため、物件を長期間保有することはコスト面でマイナスになります。
そのため、販売が長期化し買い手が見つからない場合、業者は値下げ交渉を受け入れることが少なくありません。
中古住宅の相場と価格変動について
渡邊編集者
小島解説員
本章では、中古物件の相場の推移と、築年数による値下がり率の関係について詳しく解説します。
中古住宅市場の相場の推移
首都圏の中古戸建住宅の相場の推移を、2018年から2022年までのデータを基に解説します。
【首都圏の中古戸建住宅】
年度 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 |
価格 (万円) |
3,111 | 3,117 | 3,199 | 3,524 | 3,801 |
建物面積 (㎡) |
105.43 | 104.73 | 105.51 | 103.92 | 104.17 |
築年数 (年) |
21.26 | 21.49 | 21.42 | 21.12 | 21.52 |
このデータからわかるように、2018年から2022年の5年間で、中古戸建住宅の価格は約700万円上昇しています。建物面積と築年数はほぼ一定である一方、価格は着実に上昇しているのです。
さらに、以下のグラフでは、2021年11月から2023年11月までの毎月の価格変動を示しています。
出典:月例速報 Market Watch 2023年11月度 8ページ
2022年2月以降、価格は毎月3,500万円以上で推移し、2023年には4,000万円近くにまで上昇している月もあります。
これらのデータを総合すると、過去5年間で中古住宅の市場は顕著に変動しており、2022年からは価格が3,800万円以上で推移していることがわかります。
築年数と値下がり率の関係
ここでは、「公益社団法人 東日本不動産流通機構」が提供するデータを基に、築年数と値下がり率の関係について解説します。
【首都圏の中古戸建住宅、2022年】
築年数 | 0〜 築5年 |
築6年 〜10年 |
築11年 〜15年 |
築16年 〜20年 |
築21年 〜25年 |
築26年 〜30年 |
築31年〜 |
価格 (万円) |
4,821 | 4,653 | 4,436 | 4,024 | 3,955 | 3,333 | 2,345 |
値下がり率 | 0% | 3.48% | 4.66% | 9.28% | 1.71% | 15.72% | 29.64% |
データを見ると、築年数が0〜5年の物件に対しては値下がり率が0%であるのに対し、築16年で一度大きな値下がりが見られ、さらに築26年以降ではさらに大きな値下がりが確認できます。
また、築年数と取引件数の関係も重要です。築6年〜25年の物件では、在庫数よりも成約数が多く、中古物件の中でも比較的人気が高いことがわかります。
小島解説員
中古住宅の値下げ交渉を成功させるコツ
渡邊編集者
小島解説員
売主の売却理由を聞いておく
売主の売却理由はさまざまです。例えば、新年度の転校や転勤、転職など、計画的な売却を希望するケースがあります。一方で、家族の都合や生活環境の変更に伴う売却では、早期売却よりも高額での売却を目指す場合もあります。
このように、売主の売却理由を理解することで、値下げ交渉を行いやすくなります。計画的な売却を考えている売主の場合は、値下げ交渉が成功する可能性が高くなるでしょう。
事前に相場を把握しておく
値下げ交渉を成功させるためには、事前に相場を確認しておくことが重要です。
物件の売り出し価格は、一般的に近隣エリアの似た物件の相場に基づいて設定されています。したがって、相場よりも高めに設定されている場合は、値下げ交渉の余地があるかもしれません。
相場を調べる際は、不動産ポータルサイトを利用したり、国土交通省の「土地総合情報システム」や「レインズ・マーケット・インフォメーション」を活用するのが良いでしょう。
また、不動産会社に相談する際には、相場情報を確認しておくことも重要です。
値下げ希望の理由を明確にしておく
値下げ交渉を成功させるためには、値下げしてほしい理由を明確に伝えることが重要です。
買主の都合だけで値下げを求めると、売主が拒否する可能性があります。売主の立場も考え、具体的で説得力のある理由を示すようにしましょう。
値下げに代わる条件を提示する
値下げ交渉の際に、代わりの条件を提案することで交渉が成功しやすくなります。以下のような条件を提示するのも一つの手です。
- 引き渡し日を売主の都合に合わせる
- 修繕やリフォーム費用を買主が負担する
- 契約不適合責任を免責にする
これらの条件をどう提案するかは、不動産会社と相談して決めると良いでしょう。
中古住宅の値下げ交渉で失敗するケースとは?
渡邊編集者
小島解説員
強引な値下げ交渉をしてしまう
強引な値下げ交渉は、売主との関係を悪化させる可能性があります。
例えば、相場の10%を超えるような過度な値引きを要求したり、「値引きしなければ購入しない」と強要するような態度を取ることです。
売主は最終的に取引の決定権を持っていますので、常識的な範囲での値引き交渉を心がけることが大切です。
値下げの理由が買主都合になっている
値下げ交渉の理由が「予算オーバー」や「不動産は値引きするものだと思っている」といった個人的な理由だと、売主に受け入れてもらえないことが多いです。
交渉を成功させるためには、売主が納得しやすい理由を提示することが重要です。
例えば、「他の物件と価格差で迷っているが、こちらの物件が最も気になっている」とか、「お風呂のリフォームをしたいが、予算が足りない」といった具体的かつ説得力のある理由を伝えると、売主も交渉に応じやすくなるでしょう。
値下がり時期にだけこだわってしまう
3月後半から4月にかけての値下がり時期にこだわりすぎると、本当に欲しい物件を見逃してしまう可能性があります。
中古住宅でも、築年数が浅く状態が良い物件や、好立地にある物件は非常に人気が高く、売り出しから1ヶ月以内に売れてしまうことも珍しくありません。値下がり時期だけを追い求めると、希望の物件に出会えないリスクがあります。
渡邊編集者
中古住宅の値下げ交渉の成功例・体験談
中古住宅の値下げ交渉での成功例や体験談として、Xでの投稿を2つ紹介します。
200万円の値引き交渉をして、150万円で合意が得られた
残地物を買主が撤去することで、値引き交渉が成功
また、成功例や体験談ではありませんが、Xの検索機能で「〇〇市 中古物件 値下げ」と検索すると、以下のような値下げ情報に出会える可能性もあります。
以下の記事では、値引きの過程や値引率に関する情報をまとめているので、ぜひ参考にしてください。
まとめ
中古住宅が値下がりしやすい時期には、以下の2つのケースが挙げられます。
- 3月後半から4月にかけて
- 売り出しから3〜6ヶ月ほど経過した時期
ただし、これらの時期に必ずしも値下げ交渉が成功するわけではありません。物件の築年数や値下げを考慮していない価格設定、さらには売主の状況などによっては、値下げに応じてもらえない場合もあります。
渡邊編集者
小島解説員