賃貸物件を借りる際に、仲介手数料として「家賃の1ヶ月分」が請求されることが一般的ですが、この金額が違法ではないかと疑問に思ったことはありませんか?実は、仲介手数料には上限があり、1ヶ月分を請求すること自体は違法ではありません。しかし、場合によっては「家賃の半月分」で済むこともあります。正当な上限内で適正な額を支払うことが重要です。
本記事では、仲介手数料の上限や「1ヶ月分」を請求された場合の注意点、そして交渉によって手数料を減らす方法について解説します。
山口編集者
仲介手数料とは?
部屋探しをする人の中には、「なぜ仲介手数料を支払わなければならないのか」と疑問を持つ人も少なくありませんが、これは単に物件を紹介するだけの費用ではありません。
不動産会社は、物件探しの提案、内見の手配、入居条件の交渉、契約書類の作成・確認、契約締結のサポート、さらには契約後のアフターフォローなど、多岐にわたるサポートを提供しています。
これらのサービスにかかるコストが、仲介手数料として賃借人から報酬として支払われる仕組みです。
ただし、仲介手数料が無料の場合でも、家賃や敷金・礼金に費用が上乗せされていることがあるため、トータルの費用を確認しながら判断することが重要です。
仲介手数料1ヶ月分を請求されるのは違法?
賃貸契約において、仲介手数料として家賃1ヶ月分を請求されることがありますが、これは違法ではありません。
重要なのは「合計額」であり、多くの人が「仲介手数料は家賃の半月分まで」と誤解しがちですが、実際には、借主と貸主の双方から家賃0.55ヶ月分ずつを請求することができ、合計で家賃1.1ヶ月分を請求することは合法です。
この仕組みは、宅地建物取引業法(宅建業法)第46条に基づいており、不動産業者が過度に高額な手数料を請求することを防ぐためのものです。
つまり、賃貸契約で1ヶ月分の仲介手数料を請求される場合、貸主と借主で分けて支払うことが一般的です。
しかし、どちらか片方が全額負担することも可能で、たとえば借主が家賃1.1ヶ月分を支払うことも法的には問題ありません。
ただし、仲介手数料の上限は1.1ヶ月分までであり、それを超えた額を請求することは違法となります。
また、契約前に手数料が明示されていない場合や、契約後にその額が告げられた場合は、消費者契約法に基づき違法となることがあります。
賃貸の仲介手数料は上限がある
賃貸物件の仲介手数料には、宅地建物取引業法(宅建業法)に基づき上限が設けられています。
具体的には、不動産業者が受け取れる仲介手数料の最大額は、貸主と借主それぞれから家賃の0.55ヶ月分、合計で1.1ヶ月分です。
この仕組みは、不動産業者が過度に高い手数料を請求することを防ぐための措置であり、賃貸契約における透明性を確保するために設けられています。
とはいえ、1.1ヶ月分の手数料を貸主と借主で分けて請求するのが一般的ですが、場合によっては片方が全額を支払うことも可能です。
例えば、借主が家賃1.1ヶ月分の仲介手数料を支払うことが契約で合意されれば、それ自体は違法ではありません。
ただし、この金額を超えた手数料を請求することは法的に認められていません。
また、仲介手数料は事前に明示しなければならず、不動産会社はその金額を見やすい場所に表示する義務があります。
もし、手数料に関する情報が不透明な場合や、店内に表示されていない場合は、違法な営業をしている可能性があるため注意が必要です。
仲介手数料の計算方法
仲介手数料は、通常、家賃に基づいて計算されます。基本的には家賃の0.55ヶ月分を上限として、貸主と借主それぞれに請求されます。
例えば、家賃が10万円の物件の場合、仲介手数料はそれぞれ5万5000円(税抜き)となります。
このように、家賃の0.55ヶ月分が仲介手数料の計算基準となり、これが合計で1.1ヶ月分となる形です。
契約によっては、片方の当事者が全額を支払うこともできますが、その場合も合計で1.1ヶ月分以内である必要があります。
仲介手数料の支払いは誰がする?
賃貸契約において、仲介手数料の支払いは基本的に貸主と借主の双方に関わる場合がありますが、実際の支払い方法にはいくつかのパターンがあります。
一般的には、仲介手数料は貸主と借主それぞれから家賃の0.5ヶ月分以内で徴収されますが、契約内容によって支払い方法が異なることもあります。
以下の3つのパターンが一般的です。
1.貸主と借主がそれぞれ支払う
最も一般的なパターンでは、貸主と借主がそれぞれ仲介手数料を負担します。貸主は家賃の0.5ヶ月分、借主も同様に家賃の0.5ヶ月分を支払うことになります。
2.貸主のみが支払う
契約において貸主が仲介手数料の家賃1.1ヶ月分を全額負担することもあります。この場合、借主は手数料の支払いを免れるため、借主にとっては負担が軽減される形となります。
3.借主のみが支払う
一部の物件では、仲介手数料を借主だけが全額負担するケースもあります。この場合、貸主は手数料を負担せず、借主が家賃1.1ヶ月分の仲介手数料を支払うことになります。
事前に契約で合意があれば、仲介手数料は上記のいずれかのパターンで支払われます。
特に注意すべきなのは、仲介手数料として借主に家賃1ヶ月分(消費税込みで1.1ヶ月分)を請求することも可能であり、これは法的に問題ありません。
小島解説員
仲介手数料無料に落とし穴はある?からくりや仕組みを解説
賃貸の場合、一般的には不動産会社を通して物件を借りたり、購入する際には仲介手数料を支払うことがほとんどです。
この仲介手数料の上限は賃貸の場合家賃の0.5〜1ヶ月分であり、家賃が高ければそれに応じて仲介手数料も高額になっていきます。
だからこそ、仲介手数料無料の物件は特にお得に感じられるものです。
渡邊編集者
小島解説員
自社物件や所有物件
賃貸や売買の際に共通する仲介手数料無料のケースとしては、不動産会社自体が物件のオーナーである場合です。
この場合、不動産会社は仲介業務を行わずに自社所有物件を直接貸し出したり、売買契約を行うため、仲介手数料が発生しません。特に新築一戸建てやリノベーション物件などでこのケースが多く見られます。
また、不動産会社が物件の管理も請け負っている場合、オーナーから仲介手数料や広告費などの収入を得ることができるため、自社管理物件でも仲介手数料が無料になることがあります。
ただし、不動産会社自体が所有や管理している物件は数が少なく、希望条件に合う物件を見つけるのが難しい場合もあり、この点はデメリット・落とし穴と言えます。
渡邊編集者
オーナーが仲介手数料や宣伝広告費(AD)を全額負担
不動産会社に管理を依頼しているケースと同様に、入居者が決まらない物件に対してオーナーが仲介手数料や広告費を全額負担することで、入居者が支払う仲介手数料が無料になるケースもあります。
これにより、不動産会社はオーナーから仲介手数料や広告費が確実に支払われるため、入居者から仲介手数料を受け取らなくても売り上げとして計上できるのです。
実際、オーナーが仲介手数料や広告費を負担することで不動産会社はお客さんに「仲介手数料無料」として紹介でき、契約につなげやすいメリットがあります。
仲介手数料無料の裏には見えない落とし穴があることがありますので、内見の際にはしっかりと物件の条件をチェックすることが重要ですね。
オプションの加入が必須な場合も
仲介手数料無料の代わりに、特定のオプションの支払いを条件とするケースがあります。
例えば下記のようなものがあてはまります。
- 消臭・除菌作業
- ルームクリーニング
- 鍵交換代
- 24時間緊急時サービス
- 事務手数料
このような費用は賃貸契約ではよくあることで、初期費用明細書に当たり前のように記載されています。しかし、ほとんどの場合これらは不動産会社が利益を上げるために盛り込んでいる必要のないサービスです。
いくら仲介手数料が無料になったとしてもこうしたオプションを加えることで、実質無料とは言えず当初の想定よりも初期費用がかさむ場合もあります。
小島解説員
また、賃貸契約とは直接関係のないサービスに加入することを条件にして仲介手数料が無料になることもあります。
例えば、下記の契約が挙げられます。
- ウォーターサーバー
- インターネット回線
- 指定の電力会社
- 指定のガス会社
これらが新生活に必要で納得して契約するのであれば損することはありませんが、割高だったり、不要なサービスに加入して毎月のコストが増えてしまう場合は本末転倒です。
部屋探しをする際には、本当に必要なサービスかどうかを見極めることも重要ですね。
人件費やサービスの削減
不動産会社が運営するには多額の経費がかかります。
人件費や広告費、車両費など、さまざまな費用が内訳としてあります。
仲介手数料無料を謳う会社では、不動産業務における経費を徹底的に削減しているケースもあり、こうした会社は企業努力で仲介手数料無料を実現しています。
小島解説員
また、リピート利用や口コミで多くの顧客を獲得している不動産会社も、仲介手数料に依存せずに運営できることがあります。
さらに、仲介手数料無料の物件は、上乗せされた広告費などが利益になっている場合が多く、営業マンのやる気が削がれてしまうことも。メールの返信を後回しにされたりといった接客サービスの質自体にも影響が出てしまうことがあります。
渡邊編集者
仲介手数料無料のデメリットを解説!無店舗型不動産会社に注意?
渡邊編集者
小島解説員
仲介手数料無料の不動産会社は数少ない
まず、全国展開している大手不動産仲介業者の仲介手数料について調べてみました。
(不動産名/仲介手数料)
ミニミニ(直営) | 家賃0.5ヶ月分+税 |
エイブル | 家賃0.5ヶ月分+税 |
レオパレス | 無料 |
パマンショップ(直営) | 家賃1ヶ月分+税 |
ピタットハウス(直営) | 家賃1ヶ月分+税 |
いい部屋ネット大東建託 | 家賃1ヶ月分+税 |
シャーメゾンショップ(直営) | 家賃1ヶ月分+税 |
全ての取扱物件で仲介手数料が無料となるのは、マンスリーマンションを主に取り扱うレオパレスくらいで、一般的な賃貸物件とは異なるので例外的なケースと言えます。
渡邊編集者
仲介手数料無料・半額の不動産会社は怪しい?
仲介手数料を無料もしくは半額で運営している不動産会社が違法では?と思われる人もいるでしょう。
しかし実際は違法性は全くなく、怪しいわけでも罠でもありません。仲介手数料は成功報酬であり、法で定められた上限を守ればいくら受け取っても問題ありません。
極端な話、仲介手数料を受け取らなくてももちろん合法です。
ただし、多くの場合、仲介業務は不動産会社の収入の柱であり、賃貸契約において仲介手数料を請求するのはごく当たり前なことと言えます。
仲介手数料無料の無店舗型不動産会社が増えている
近年では店舗を持たない不動産会社も増加しており、その多くが仲介手数料を無料にしています。
家にいながら部屋探しから契約まで完結できるため、特に県外から引っ越しする人にとっては大きなメリットと言えます。
小島解説員
落とし穴①オンライン上のやり取りが多い
オンライン上で完結する無店舗型不動産会社では、やり取りをメールやLINEだけで行い、電話をかけても折り返し待ちになるなど、疑問や問題解決に時間がかかることがあります。
対面接客と違って気になったことをその場で聞けるわけではないので、既読にならなかったり、返答を待つ時間が発生したりして、スピード感に欠けるのです。
また、内見に対応していない場合もあり、入居後に予期しない問題に直面する可能性もあります。
落とし穴②物件自体に詳しくない
地域密着型の不動産会社は、その街の情報や特徴などに精通しています。取扱物件やエリア内の詳細な情報だけでなく、大家さんや前の入居者から得た情報や、トラブルの発生傾向なども把握しているため、部屋探しにおいて非常に信頼できます。
一方で、無店舗型の不動産会社は会社拡大のスピードも速く、その土地に対する情報の密度が低いことが多いのです。特定の物件やエリアについても基本情報程度しか把握してない場合があります。
渡邊編集者
落とし穴③自社物件を持っていない
無店舗型の不動産会社は、通常は自社物件を持っておらず、デザイナーズマンションやリノベ物件、古民家風など、他の不動産屋ではとりあつかってないような珍しい物件を希望しても、データベースに登録されたありふれた物件に限られることが多いです。
小島解説員
仲介手数料の値引き交渉のコツとタイミング
賃貸物件を探している際、仲介手数料を値引きしてもらうことは可能です。
ただし、交渉にはタイミングが重要です。
交渉を有利に進めるためには、適切なタイミングを見極め、交渉のコツを押さえておくことが成功のカギとなります。
以下に、仲介手数料を値引きするためのコツとタイミングについて詳しく解説します。
申込書記入時に交渉を開始
仲介手数料の値引き交渉をする最適なタイミングは、物件の申込書を記入する際です。
この段階では、まだ正式な契約が成立していないため、金銭に関する交渉が比較的行いやすくなります。
特に気に入った物件があれば、仲介手数料を少しでも安くすることで契約を結ぶ意向があることを伝えると、交渉がスムーズに進むことがあります。
繁忙期を避けて閑散期に交渉
不動産業界には繁忙期と閑散期があり、交渉がしやすい時期があります。
賃貸契約の繁忙期は1月から3月にかけてで、特に多くの人が物件を探しているため、この時期の交渉は難しくなることがあります。
しかし、逆に7月から8月の閑散期には、賃貸需要が落ち着くため、不動産会社も柔軟に対応してくれる可能性が高くなります。
したがって、値引き交渉をするには閑散期を狙うのが効果的です。
契約書作成前が交渉のポイント
契約書を作成する前であれば、基本的に仲介手数料の値引き交渉が可能です。
このタイミングで交渉を済ませておくことが、後々のトラブルを避けるために重要です。
契約書の段階で突然値引きをお願いすると、不動産会社も困惑する可能性があるため、早めに交渉を終わらせることがマナーです。
また、重要事項説明書には賃料や仲介手数料の額が記載されていますので、宅建士から重要事項の説明を受けている段階で交渉を行うことが一般的です。
この段階で仲介手数料の割引を提案すると、スムーズに交渉が進むでしょう。
柔軟な交渉を心がける
交渉を行う際は、柔軟な姿勢を持つことも重要です。
たとえば、家賃や条件に不満がある場合、その部分を交渉材料にして仲介手数料を値引いてもらう提案が有効です。
また、契約期間の長さや即決を条件に値引き交渉をすることも可能です。
これらの要素を上手に組み合わせることで、より有利な条件で契約を結べる可能性が高くなります。
礼儀正しく交渉
交渉時には、礼儀正しく対応することを忘れないようにしましょう。強引に値引き交渉を行うと、逆に不動産会社の対応が悪くなる可能性があります。
相手に敬意を払いつつ、自分の希望を伝えることで、交渉が円滑に進みやすくなります。
これらのコツを参考にして、適切なタイミングで交渉を行うことで、仲介手数料の値引きが成功する確率を高めることができます。
仲介手数料無料で失敗した体験談
小島解説員
おとり物件の可能性も?
おとり物件は、実際には契約できない部屋を集客目的に利用するものです。
情報管理が追いつかず、本当に成約していた可能性も否定できませんが、仲介手数料無料物件は情報の更新スピードが負いつかず、物件の空室状況がわかりづらい点に注意が必要です。
仲介手数料半額だけど上乗せされてる…?
仲介手数料が半額だから安く済むかと思ったら、オプションで様々な費用を請求され、結局浮いた額と同じくらいの費用がかかってしまったというケースです。
明細を確認して、不要だと思うものは一つずつ説明を求めてもいいと思います。
渡邊編集者
物件情報がでたらめだった
物件情報の中で、特に部屋の広さが間違っている場合は致命的です。仲介手数料無料の物件であるからこそ、情報の正確性を確認することが非常に大切です。
他社で内見してから契約を促す仲介業者もいる
仲介手数料無料や格安を謳う業者さんで、かつ、内見を他社で済ませてくるよう促すような業者さんはお部屋を実際に見てはいません。中にはお客様とも一度もお会いしていない業者さんもいらっしゃいます。お部屋もお客様も実際に見たことがない業者さんからのお申込はお受けできないことが多いです。
— kemono🦇@チョコラータ号🚌 (@moon_happy_love) October 22, 2022
仲介手数料無料の代わりに、内見を行わない不動産会社も存在します。そのため、部屋を見てから決めたい場合は契約の意志がない他社で内見を依頼することになりますが、心理的にもハードルが高いですよね。
他社にとっても契約につながらない迷惑行為ですし、オーナーもお客さんと対面しないまま契約を完了させようとする不動産会社を嫌がる傾向にあります。
渡邊編集者
別の名目で上乗せする業者もいる
前述でも解説しましたが、仲介手数料無料の実態として、別の名目で費用が請求されることがあります。
見積もりに不要なオプションが含まれていないか、家賃が近隣の似た物件よりも割り増しされてないか、賃料相場を事前に確認することが重要です。
仲介手数料無料にはワケがある!落とし穴にはまらない部屋探しを
仲介手数料無料の賃貸物件には、家賃や敷金が相場よりも高めに設定されていたり、他に何かしらのマイナス要素を抱えていることがあります。
物件の資料だけでは見えない罠や落とし穴もあるため、実際に内見を行ったり、担当者が物件についてどれだけ詳しいかを確認したりすることが重要です。