- 不動産の仲介手数料はなぜ必要?からくりとは
- 両手仲介は違法?
- 土地や物件の売買で仲介手数料は売主・買主のどちらが払うのかを解説
日本では、不動産仲介手数料を売主と買主の双方が支払うのが一般的です。
そのため、「両者が仲介手数料を支払うのはおかしいのでは?」と疑問を持つ人はそれほど多くありません。しかし、アメリカやシンガポールなどの諸外国では、買主が仲介手数料を負担しないのが常識となっています。この違いを知って「なんだか納得いかないな…」と思う方も多いのではないでしょうか?
本記事では、「仲介手数料を支払うのはおかしいのか?」という疑問、さらには両手仲介が違法かどうかや、仲介手数料を無料または値引きするための具体的な方法についても解説します。
小島解説員
不動産の仲介手数料を売主・買主どちらも払うのはおかしい?
日本の不動産業界では「両手仲介」という手法が一般的であり、これは売主と買主の両方から仲介手数料を受け取ることで最大の利益を得る方法です。
このように、売主・買主両方が手数料を支払うことが一般的です。
しかし、アメリカなどの諸外国では、買主から仲介手数料をもらうという慣例は存在しません。
アメリカなどの不動産業界では、取引が成立した場合、売主がエージェントに手数料を支払う形が主流となっており、日本の不動産市場とは異なる仕組みです。
ここからは、「不動産の仲介手数料を売主と買主の両方が支払うのはおかしいのか?」という疑問について解説します。
買主が不動産仲介手数料を払うのは日本だけ
あらためて考えると、不動産取引における買主は「お客さん」という位置付けです。
しかし、日本では「お客さん」である買主も仲介手数料を支払う必要があります。
土地や物件の購入代金に加えて、さらに誰が払うかというと、買主が仲介手数料を支払うことになります。このため、買主の負担は非常に大きいと言えます。
一方、アメリカやシンガポールなどの国々では、買主が不動産仲介会社であるエージェントに仲介手数料を支払うことはありません。
取引が成立した場合、売主がエージェントに成功報酬として手数料を支払う仕組みとなっています。
小島解説員
両手仲介では自社の利益に走りがち
日本の不動産会社の主な収益源は仲介手数料であり、いかに多くの手数料を得るかが各不動産会社の最大の目標です。
そのため、売主と買主の両方から仲介手数料を受け取れる「両手仲介」は、不動産会社にとって非常に魅力的な取引となります。
しかし、「少しでも高く売りたい」売主と「少しでも安く買いたい」買主の希望を同時に満たすことは難しいと言えます。
渡邊編集者
小島解説員
買主が決まっている不動産の仲介手数料の相場は半額
知り合い同士で不動産売買を行うなど、売主と買主の両方があらかじめ揃っているケースも意外と多く見られます。
ただし、住宅ローンを組む際には、不動産会社に仲介を依頼しなければ原則としてローンを組むことはできません。
このような場合、不動産会社にとって買主が最初から決まっている不動産は、「買主を見つける」手間が省けるため、非常にメリットがあります。そのため、中小規模の不動産会社の中には、仲介手数料を通常の半額にするところも存在します。
しかし、大手の不動産会社では仲介手数料が一律に決まっており、半額にすることはほとんどありません。
渡邊編集者
小島解説員
買主・売主間の個人取引なら仲介手数料はかからない
個人間で不動産を売買する場合、不動産会社を介さないため、仲介手数料を支払う必要がありません。
これにより、法律で定められた仲介手数料の上限額や消費税といった追加コストが発生せず、売主・買主双方にとって経済的な負担が軽減されるのが大きなメリットです。
ただし、個人取引には特有のリスクも伴います。
重要事項説明書の作成や物件の権利関係の確認、契約書の精査など、通常は不動産会社が行う専門的な業務を自ら対応する必要があり、これらに不備があると取引後にトラブルが発生する可能性があります。
また、宅地建物取引士の資格を持たない場合、金融機関の融資を利用することが難しい点にも注意が必要です。
そのため、費用を抑えたい方には魅力的な選択肢ではあるものの、リスクを最小限に抑えるためには不動産実務の知識が求められます。
小島解説員
そもそも仲介手数料とは?
そもそも仲介手数料とは一体何なのでしょうか。まずは基本的なことを分かりやすく解説します。
不動産会社に支払う成功報酬
不動産の売買時に発生する仲介手数料とは、物件の売買契約が成立した際に売主と買主の双方が不動産会社に支払う成功報酬のことです。
不動産会社は売買を成立させるために、不動産ポータルサイトに広告を掲載したり、物件の内覧で購入希望者に対応したりと、さまざまな営業活動を行います。これらの活動に対する対価として顧客から支払われるのが仲介手数料です。
小島解説員
仲介手数料の上限額
不動産会社の主な収益源は、顧客から受け取る仲介手数料です。この仲介手数料の上限額は法律で定められており、下表の計算式のとおりです。
売買取引金額 | 仲介手数料の上限 |
200万円以下 | 売買金額×5%+消費税 |
200万円以上400万円以下 | 売買金額×4%+消費税 |
400万円以上 | 売買物件×3%+消費税 |
例えば、3,000万円の中古マンションを成約した場合、不動産会社は仲介手数料として105.6万円を顧客から受け取ることになります。
不動産会社が上限を超える仲介手数料を受け取ってしまった場合は法令違反となりますが、下限はありません。
両手仲介の場合、売主と買主の両方から仲介手数料をもらえるため、2倍の211.2万円を受け取ることができます。
このように、仲介手数料は不動産会社にとって非常に重要な収益源となっています。
渡邊編集者
小島解説員
不動産会社と交渉して半額で同意してくれるのであれば半額で何ら問題はありません。
最初からこういうものだと決めつけず、まずは交渉してみてはいかがでしょうか。
両手仲介は違法?合法?
前章で解説したように、日本では両手仲介は違法ではありません。しかし、多くの国や地域では、不動産取引において「両手仲介」は違法とされています。
渡邊編集者
小島解説員
法律や倫理規定により、不動産業者は一方の当事者の利益を優先する義務がありますが、両手仲介はこの原則に反する可能性があります。そのため、多くの国や地域では禁止されているのです。
不動産の仲介手数料を無料にできるからくりとは
不動産会社の主な収益源は仲介手数料であり、手数料が入らないと会社が損をするというイメージがあります。しかし、実際には仲介手数料が無料の物件を扱っている不動産会社も多く存在します。
ここでは、不動産の仲介手数料が無料になる仕組みについて解説します。
売主or買主のどちらか一方からもらっている
両手仲介とは、不動産会社が売主と買主の両方から仲介手数料を受け取ることを指します。この場合、不動産会社は売主または買主のどちらか一方から仲介手数料をもらえば採算が取れるため、もう一方の仲介手数料を無料にしても損をしません。
渡邊編集者
自社の販売物件は仲介手数料が発生しない
自社が販売している物件の場合、仲介手数料は発生しません。
そのため、仲介手数料を払いたくない場合は、不動産会社が直接販売している物件がおすすめです。不動産会社が売主と買主との間に介在せず、直接的な契約が成立します。もちろん仲介手数料はゼロ円です。
小島解説員
インターネット広告でコスト削減
不動産会社が重視している集客方法の一つが、インターネット広告を通じた不動産情報ポータルサイトへの掲載です。近年、ユーザーはまずインターネットで不動産情報をリサーチし、いくつか気になる物件をピックアップしてから不動産会社を訪れるパターンが増えています。
インターネット広告には掲載費用がかかりますが、大手の不動産情報ポータルサイトに掲載することで多くの人の目に触れるため、集客効果が高いのがメリットです。また、営業社員の人件費やチラシ作成費などを節約できるため、経費削減にもつながります。
これにより、不動産会社はコストカットできた分を仲介手数料無料または減額へ回すことができます。
渡邊編集者
仲介手数料値引き交渉のコツ
不動産を購入する際、仲介手数料は見過ごせない大きなコストです。
物件価格に比例して決まるこの手数料は、買主にとって大きな負担となることが少なくありません。
しかし、交渉次第でこの手数料を値引きできる可能性があるのをご存じでしょうか?
仲介手数料の値引きは、一見ハードルが高そうに思えるかもしれませんが、ポイントを押さえて進めれば成功するケースも多くあります。
ここでは、不動産会社との交渉をスムーズに進めるための具体的なコツを解説します。
購入・売却意欲をしっかり伝える(買主向け)
仲介手数料の値引きを交渉する際は、まずあなたの購入意欲が高いことを明確に伝えることが重要です。
不動産会社にとっては、契約成立が一番の目標ですから、「このお客さんは確実に契約してくれる」と思わせることが効果的です。
営業担当者に対して、「すぐに契約したい」という意思を言葉や態度で示しながら、「仲介手数料についても調整できると助かります」とさりげなく提案してみましょう。
売主ができる値引き交渉のポイント(売主向け)
売主として仲介手数料を値引き交渉する場合、不動産会社にとってのメリットを考えることが重要です。
例えば、同じ会社で物件を複数売却する予定がある場合や、短期間で売却したい意向があることを伝えることで、不動産会社が取引成立を優先する可能性が高まります。
さらに、「他社の仲介手数料がこれだけ低かった」という情報を持っておくと、交渉材料として効果的です。
不動産会社が複数の取引を通じて利益を得られる見込みがあると判断すれば、手数料の値引きに応じる可能性が高まるでしょう。
他社の条件を参考にする(売主・買主共通)
仲介手数料の交渉では、「他社の条件」を上手に利用するのも有効な方法です。
「○○社では△△円値引きしてくれると言われたのですが、御社ではどうですか?」と丁寧に尋ねることで、不動産会社が条件を見直すきっかけになります。
ただし、これは嘘の情報を使うのではなく、実際に他社で得た具体的な見積もりを元に話を進めることが大切です。
不動産会社は長年の経験を持つことが多く、不正確な情報は簡単に見抜かれてしまいます。
負担を軽減する理由を伝える
仲介手数料の値引き交渉をスムーズに進めるには、具体的な理由を提示することが鍵です。
買主の場合、「予算に限りがある」「物件の購入費用が予想より高かった」などの事情を伝えると、不動産会社も考慮してくれる可能性が高まります。
売主の場合は、「他にかかる諸費用が多い」「物件を早く売却したい」など、具体的な事情を話すことで、交渉が前向きに進むことがあります。
担当者と良い関係を築く
交渉を成功させるためには、担当者に「協力したい」と思わせることが大切です。
強引な値引き交渉は逆効果になることもありますので、誠実で丁寧な態度を心がけましょう。
また、感謝の気持ちを適宜伝えることで、担当者があなたの要望に応えるモチベーションが高まります。
交渉の場では「どうしても予算的に厳しいので…」と真摯に相談する姿勢が鍵となります。
仲介手数料を無料にしてもらうには?
値引き交渉のコツを押さえるだけでなく、仲介手数料そのものを無料にできる方法もあります。
不動産会社の仕組みや契約形態をうまく活用することで、手数料の負担をゼロに近づけることが可能です。
ここでは、仲介手数料を無料にしてもらうための具体的な方法や、不動産会社との交渉ポイントを詳しく解説します。
最初から仲介手数料無料の物件を選ぶ
不動産会社に対して「仲介手数料を無料にしてください」と交渉するのは非常に困難な場合が多いです。
不動産会社の主な収益源が仲介手数料であるため、簡単に応じてくれることはほとんどないでしょう。
そのため、買主の場合は最初から「仲介手数料無料」の物件を選ぶのもひとつの手です。
特に中小規模の不動産会社では、営業戦略の一環として仲介手数料無料を大々的にアピールしてキャンペーンを打ち出している店舗もよく見ます。
そうした不動産会社で物件を選べば交渉の手間や時間もかかりませんし、何より気楽です。
【購入】不動産会社の直販物件の中から選ぶ
物件を購入する際に、不動産会社が直接販売している物件を選ぶのも良い方法です。例えば、リノベーション済みの中古マンションなどは直販物件の場合が多いですね。
不動産会社が直接販売する場合、仲介手数料が発生しないのが大きな特徴です。これは、不動産会社が仲介する立場ではなく、自社の物件を直接販売する形態です。
このような不動産会社は在庫を少なくできるため、販売の優先順位が高く、良い物件を優先的に紹介してくれることがあるのでねらい目と言えます。
【売却】不動産会社に買取を依頼する
売却する場合、不動産会社に買取を依頼する方法もあります。
不動産会社が買主として直接所有者から物件を買い取る場合、仲介手数料は発生しません。できるだけ早く売却したいという人にもおすすめです。
近年では、空き家を買取してリフォームし、改装した後に消費者に販売する不動産会社も増えていますので、古い空き家や古民家でも積極的に買い取ってくれるケースが増えています。
仲介手数料を無料or減額交渉してみる
不動産売買における仲介手数料は、他の諸費用に比べてかなり高額です。
不動産会社に仲介手数料を無料にしてもらうよう交渉するだけなら特に損することもないので、一度試してみてもいいのではないでしょうか。
完全に無料にするのは難しい場合でも、減額してもらえる可能性があります。
特に中小規模の不動産会社では、両手仲介の場合、どちらか一方から手数料をもらえれば採算が取れるため、無料または減額に応じてくれる場合も多々あります。
交渉自体苦手な方も多いと思いますが、そうした方は最初から仲介手数料が無料または不動産会社が直接販売している物件をおすすめします。
小島解説員
仲介手数料を無料にすることで陥りやすいトラブルやデメリット
仲介手数料が無料になることは消費者にとっては嬉しいことですが、その裏にはトラブルが発生するリスクも潜んでいます。
ここでは、仲介手数料を無料にすることで発生しやすいトラブルや陥りやすい「罠」について解説します。
売主の場合
売主にとってデメリットになることが考えられるのは以下の3つです。
- 囲い込みをされて買い手が決まらない
- 不動産会社が熱心に営業活動をしてくれない
- サービスの質が落ちる
- 別の費用で請求される
ひとつずつ解説していきます。
囲い込みをされて買い手が決まらない
売り手が仲介手数料を無料にするには、通常、不動産会社が買い手から仲介手数料を受け取るか、不動産会社自身が物件を買い取る場合があります。
仲介手数料を買主から受け取り、売主からの仲介手数料を無料にするには、不動産会社が「両手仲介」を行う必要があります。
つまり、自社で買主を見つけるため、他の不動産会社からの購入希望者を断る場合があるということです。これを「囲い込み」と言います。
仲介手数料が無料であることにこだわりすぎて最終的に損をしてしまっては本末転倒です。
小島解説員
不動産会社が熱心に営業活動をしてくれない
仲介手数料の金額が高くなると、不動産会社だけでなく営業担当者のインセンティブ(歩合給)も増え、それにより年収をアップさせることが期待されます。そのため、営業マンは意欲を持って販売活動を行います。
一方で、仲介手数料が「ゼロ」になると、会社と営業マンの利益が減少してしまうため、物件を売るためのモチベーションが下がる可能性があります。これにより、不動産会社が熱心に営業活動を行わなくなり、物件の売却が難航することが考えられます。
サービスの質の低下
仲介手数料が無料である代わりに、サービスの質が低下する可能性も考えられます。
例えば、税務や法律の相談に対してあまり熱心に対応してもらえない、または迅速な対応が得られないといった事例があります。
仲介手数料が無料になることで、何らかの形でサービスの品質や範囲が制限されることもあるという点に留意する必要があります。
別の費用に上乗せ請求される可能性
仲介手数料が無料であるからといって、すべてが問題ないわけではありません。
実際、一部の不動産会社では別の名目で費用が請求されることがあります。
例えば、建物の状況調査(インスペクション)、事務手数料、司法書士による手続き費用などがそれに当たります。
仲介手数料が無料であるからといって、全ての費用がクリアになるわけではないということです。
買主の場合
次に買主の場合で考えると、仲介手数料を無料にすることで発生しやすいデメリットは以下の3つがあります。
- 他の顧客が優先される
- 売れにくい物件を紹介される
- 保証内容が手厚くない
それぞれの内容について解説します。
仲介手数料を支払っている顧客を優先される
仲介手数料を無料にすると、他の顧客(仲介手数料を支払う顧客)が優先される可能性があります。
小島解説員
気に入った物件があり、早々と営業担当者に申し出ても、なぜか他の人に先を越されることもあります。特に人気のある物件では、他の顧客に先を越されて申し込めなかった…なんてことも考えられます。
売れにくい物件を紹介される
物件を紹介してくれる不動産会社でも、仲介手数料が無料の場合、人気のない物件や買い手がつきにくい条件の物件を選んでくることがあります。
たとえば、「日当たりがよくない」「周辺環境に問題がある」などです。
人気のある物件は良い条件で高価格で早めに売れるため、仲介手数料を得られる見込みが高い顧客に優先的に紹介されることが多いでしょう。
保証内容が手薄になる
仲介手数料を無料にすることで、購入後のアフターサービスや保証内容が手薄になるケースも散見されます。
例えば、瑕疵保証期間が短いなどです。不動産会社は、一定期間内に発見された住宅の瑕疵に対して修繕費用を負担するサービスを提供していますが、その期間が短かったり、保証内容が限定されていたりすることがあるのです。
宅建業法では、不動産会社は引き渡し後2年以上の契約不適合責任を負う義務がありますが、実際には最低限の保証期間しか設けない場合もあります。
小島解説員
渡邊編集者
まとめ
日本の不動産業界では、売主・買主の両方が仲介手数料を支払うのが一般的です。
そのため、仲介手数料を無料または減額にすることは一般的に難しいとされています。ただし、買主があらかじめ決まっている場合や特定の条件が揃っている場合には、仲介手数料の減額や無料にできる可能性もあります。
売買取引の具体的な条件や状況に応じて左右されますので、本当に減額交渉することがトータルでプラスになるか?ということをよく考えて実行に移すことをおすすめします。