中古戸建の値引き交渉で500万値下げは可能?中古住宅の値引きの相場を解説


この記事を書いた人
小島 優一
宅地建物取引士

宅地建物取引士、2級ファイナンシャルプランニング技能士。生命保険会社にてリテール業務に従事した後、2014年に不動産仲介会社であるグランドネクスト株式会社を設立。 2021年より幻冬舎ゴールドオンラインにて不動産を通じて財産を守る、増やす、残す記事を連載している。 >> 詳細はこちらから

この記事のまとめ
  • 中古戸建の値引きは可能!コツとタイミングを解説
  • 中古住宅の値引き交渉で500万値下げの成功例も
  • 値引きしやすい物件の特徴や体験談も紹介

中古戸建の購入において、値引きが可能かどうか、またその値引き金額がどの程度かについては、多くの購入者が関心を持つポイントです。

家の購入は元値が高額なため、例え数%でも、数十万円から数百万円の値引きになることもあります

中古戸建の値引き額を決定するのは基本的に売主です。

仲介業者は物件の購入者と売主の間に立つ役割を果たしますが、最終的な値引き額を決定するのは売主の判断に委ねられます。従って、売主の意向によって値引きが成功する場合もあれば、交渉がうまくいかない場合もあるということです。

この記事では、中古戸建の値引きについて詳しく解説しています。値引きの方法や相場、値引きがしやすい物件の特徴、さらには実際に値引き交渉を行って一戸建てを購入した人の体験談など、多岐にわたる情報を網羅しています。

小島解説員小島解説員

渡邊編集者渡邊編集者

中古戸建の購入を検討している方にとって、なかなか人には聞きづらい「値引き」に関する情報をたくさん盛り込みました。非常に参考になる内容となっていますので、ぜひお役立てください。

中古戸建の値引きの限界は

中古戸建の値引きを行う際には、無駄な交渉を避けるためにも、まずは値引きの限界を把握しておくことが重要です。

渡邊編集者渡邊編集者

値引きの限界がわかっていれば、無茶な交渉はしませんよね。交渉が失敗するリスクもなくなるのではと思うのですが…?

値引きの限界額は明確に示されるわけではなく、推測に基づくものです。これ以上値引きを要求すると交渉が決裂する可能性がある金額を予想し、その範囲内で交渉を行うようにしましょう。

小島解説員小島解説員

大幅な値引きは失敗するケースも

値引き額の限界を正確に知るのは難しいため、突然の大幅な値引き交渉は避けるべきです。

では、どのように値引きの限界を推測すれば良いのかを解説します。

相場観の把握

 まずは、購入希望の物件がある地域の相場をリサーチしましょう。

築年数や間取りなどが類似した物件の価格を確認し、相場感をつかんでおきます。これにより、おおまかな価格の目安を得ることができます。

売主や物件の状況を把握する

 不動産会社を通じて、売主が物件を売りに出した背景や物件の状況を確認します。

例えば、転勤や離婚、ローンの支払い困難など、売主が急いで物件を手放したい理由や、物件に対する愛着がありはじめから価格設定を高めにしているかといった事情をつかんでおくと後々交渉で役立ちます。

同時に、物件の現状についても確認しておくことが大切です。

不動産会社とのコミュニケーション 

不動産会社の担当者とのコミュニケーションを大切にし、売主の状況や値引き交渉の進め方についてしっかりと情報交換を行いましょう。

渡邊編集者渡邊編集者

特に、物件の価格だけに固執せず、自分の要望だけを強引に通そうとしない姿勢も重要です。

値引きを決めるのは売主

中古戸建の販売価格を設定するのも、値引きに応じるのも最終的には売主の判断です。

確かに不動産会社が物件を査定し、その査定額に5%ほど上乗せして販売価格を決定するのが一般的ですが、基本的には売主の希望が優先されるため、不動産屋が提案する価格よりも高い価格で販売されることもあります

時間が経過すると状況が変わる

販売価格の決定や値引きの決定権は売主にありますが、高い値付けで売り出しをスタートした結果、物件が長期間売れない場合には状況が変わることがあります。

売主と不動産会社は通常、3ヶ月の媒介契約を結んでいますが、販売開始から1ヶ月以上経過すると、売主は「このままでは売れないかも」といった焦りを感じ始めます。この段階で、売主が値引きに応じやすくなる傾向があります。

小島解説員小島解説員

渡邊編集者渡邊編集者

このタイミングが値下げ交渉のチャンスということですね。

さらに、媒介契約の3ヶ月が近づくと、不動産会社も仲介手数料を得られないまま契約が終了となり、タダ働きになるリスクが増すため、さらに売却を急ぐことになります。

同時に、売主も物件が売れないことに焦りを感じ、値引きに応じる可能性が高くなります。

販売当初は少しの値引きには応じるものの、3ヶ月が過ぎると売主の心理状態が変わり、10%程度、あるいはそれ以上の値引きに対応せざるを得ない状況になります。

MEMO

つまり、時間が経つほど値引きの幅が大きくなる傾向があるのです

【例】不動産会社での査定が3,000万円だった戸建住宅の販売

タイミング 価格の設定と変更
売主と不動産会社の心理状態
販売当初 3000万円に5%を乗じる
➡3150万円で販売開始
やや強気
販売開始から
1ヶ月~2ヶ月
5%程度の値下げ
➡3000万円に価格変更
査定額まで値下げして様子を見る
販売開始から
2ヶ月~3ヶ月
10%程度の値下げ
➡約2835万円に価格変更
つまり、時間が経つほど値引きの幅が大きくなる傾向があるのですとしても売却したい

販売経過に伴う変化

販売開始直後

売主も不動産会社も、査定額に基づいた価格での販売を開始し、値引き交渉にはあまり応じないことが多いです。

販売開始から1ヶ月以上

物件が売れない状況が続くと、売主に焦りが見え始めます。この時期には、値引きに応じる可能性が高くなります。売主は価格を下げることで買い手を引き寄せようとするためです。

販売開始から3ヶ月後

媒介契約の期限が近づくと、売主はますます売却に向けて値引きに応じる可能性が高まります。不動産会社も仲介手数料を得られないリスクを避けるため、積極的に値引きに応じる方向で売主にアドバイスします。

10%以上の大幅値引きもこの段階なら可能な時期です。

このように、時間が経過することで売主の心理や売却の状況が変化し、値引き交渉が有利に進む可能性が高まります

購入希望者としては、物件の状況や市場動向を見極めながら、適切なタイミングで値引き交渉を進めることが重要です。

小島解説員小島解説員

物件の値引きの限界は、さまざまな要因によって変動します。具体的な限界を正確に知ることは難しいですが、推測に基づく戦略を立てることは可能です。

以下に、値引きの限界を推測するための重要なポイントをまとめます。

値引きの限界を推測するためのポイント
  1. 売主の現状(心情)を理解する
  2. 近隣物件の相場データを収集する
  3. 不動産会社とのコミュニケーションを怠らない
  4. 値引きを決定するのは売主
  5. 販売開始から時間が経過するほど値引きの限界は下がっていく

値引き交渉では、10%程度の値下げが実現できれば成功と考え、適度な要求に留めることが大切です。過度な値引き要求は交渉を難しくする可能性があるため、現実的な範囲内での交渉を心がけましょう。

次の章では、中古物件の具体的な値引き相場についてさらに詳しく解説します。

中古戸建の値引きの相場はどのくらい?

この章では、中古戸建の値引き相場をどのように確認するかを中心に解説します。

渡邊編集者渡邊編集者

前章で触れた「中古一戸建の値引きの限界について」の内容と一部重複する点もありますが、しっかりと読み込んで理解しておくことが重要です。

地域の相場を確認しておく

まずは、購入を検討している中古戸建の周辺エリアの相場を確認することが重要です。できるだけ類似の間取りや築年数の物件を基準にどの程度の価格で売り出されているか把握してみてください。

また、レインズを活用することで、簡単に中古物件の価格情報を得ることができます。

値引き交渉を成功させるためには、近隣地域の相場確認が欠かせません。必ず実施してください。

小島解説員小島解説員

値引き相場は約10%?

首都圏の中古戸建に関する状況を振り返ると、多くのケースで10%を超える値引きが見られ、築年数によっては20%以上の値引きもあります。

しかし、一般的には約10%の値引きが相場とされています。

記事の後半では、実際に値引き交渉を行って中古戸建を購入した体験談をご紹介しますが、10%の値引きで購入できるケースはそれほど多くありません。

MEMO

まずは10%を基準に値引き交渉を進め、場合によっては10%に満たない値引きもあることを念頭に置いておくことが重要です。

中古戸建の値引きはどのくらいできる?

中古戸建の値引き金額についてご紹介します。まず、値引きの概要を確認してみましょう。

値引きは1割〜2割?

中古戸建物件に対する値引きは、一般的に10%(1割)程度と考えられます。ただし、これは平均的な値引き率であり、20%もの大幅値引きがある一方で1円も値引きしないという売主もいます。

渡邊編集者渡邊編集者

あくまで中間値の数字であり、すべての物件が10%値引きしてもらえるわけではないということですね!

値引きされる要因

値引き額は以下の要因で決まることがほとんどです。

  • 物件のある地域
  • 売主の状況
  • 売却理由や引き渡し時期
  • 物件の状態

一例として、中古戸建物件の値引き状況を紹介します。

  新規登録価格 成約価格 差額 値引き率
築0~5年  4,918万円 4,171万円 747万円 15.1%
築6~10年  4,564万円 3,984万円 580万円 12.7%
築11~15年  4,514万円 3,745万円 769万円 17%
築16~20年  4,144万円 3,485万円 659万円 15.9%
築21~25年  3,933万円 3,023万円 910万円 23.1%
築26~30年  3,667万円 2,453万円 1,214万円 33.1%
築31年~  2,826万円 2,062万円 764万円 27%

※公益財団法人 東日本不動産流通機構の2020年2月28日に発行された「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2019年)」をベースに作成。新規登録価格は売主の希望価格、成約価格は取引成立の価格を表しています。

データからわかるように、築年数が経つほど値引き率も大きくなる傾向があります。

注意

ただし、これらのデータは不動産価格が特に高い首都圏のものであり、地域によっては異なる場合があります。また、売主によっても値引き率は大きく変わることに注意してください。

詳細は記事の後半で解説していきますので、ぜひご覧ください。

値引きができる理由

売り出し時、中古戸建の価格は、値引きが可能であることを見越して少し高めに設定されていることが多いです。さらに、売主にとっても買い手が見つからない状況は不利であるため、値引きの余地があります。

例えば、売主が既に新しい家を購入している場合、買い手が見つからないと「新しい家」と「売りに出している家」の二重ローンに直面する可能性があります。また、固定資産税などの継続的な費用負担が生じることから、早急に買い手を見つけたいという気持ちが強くなります。

このため、売主は値引きに応じやすくなるのです。

もちろん、大幅な値引きを期待するのは難しいかもしれませんが、本記事で解説する内容を参考にすれば、効果的な値引き交渉ができるでしょう。

小島解説員小島解説員

渡邊編集者渡邊編集者

値引き交渉の具体的な方法については、「中古戸建の値引き交渉のコツ」の章で詳しく説明します。どうぞ参考にしてください。

値引きされやすい中古戸建の特徴

つづいて値引きできる(値引き交渉に応じてもらえやすい)中古戸建の特徴について解説します。

値引きされやすい中古戸建の物件の特徴
  1. 買い手がなかなか見つからない
  2. 相場より高い
  3. 販売開始から時間が経っている
  4. 物件の引渡し日がかなり先に設定されている

買い手がなかなか見つからない

買い手がなかなか見つからない物件には、値引きの余地があります。では、買い手が見つからない物件にはどのような特徴があるのでしょうか。

買い手が見つからない物件の特徴
  • マンションより戸建のほうが値引きの期待ができる
  • 木造の一戸建

マンションより戸建の方が値引きの期待ができる 

少子高齢化により、戸建てのようなたくさんの部屋を必要としない世帯が増加していることや、男女ともに未婚率が増加していることから、マンションの人気が高まっています。

MEMO

今後空き家問題も深刻化が予想されており、中古戸建住宅は値引きしてでも買い手を見つける必要に迫られるでしょう。

木造の一戸建 

木造の一戸建は、鉄筋コンクリートなどと比較して劣化が早く、資産価値が低下しやすいです。

財務省が定めた耐用年数は、木造が22年に対し、鉄筋コンクリートは47年と倍以上の差があります。

渡邊編集者渡邊編集者

もちろん、この数字は建物の寿命を示すものではないので、22年を経過しても住めなくなるわけではありません。

災害の多い日本では火災リスクだけでなく、耐震性・洪水による浸水リスクなどに弱い木造住宅は値引きできる可能性が高まります。

相場より高い

こだわって作った注文住宅や、おしゃれにリノベーションした住宅など愛着が強い場合は売主が手放したくないという思いから、相場より高い価格に設定されていることがあります。

地域の同じような広さの物件をいくつか調べて、相場感をつかんでおくことが重要です。

MEMO

地域の相場を根拠に値引き交渉を行うことで、値引きが成功する可能性が高くなります。

しかし売主にとって思い出深い大切な住宅の場合、地域の相場を根拠に強く値引きを求めると、値引き交渉どころか販売自体を断られることもあります。

小島解説員小島解説員

そのため、売主の「物件を売りに出すことになった事情」を確認するようにしてください。こうした配慮をもって交渉することで、良好な関係を保ちながら値引きの成功率を高めることができます。

販売開始から時間が経っている

中古戸建の買い手がなかなか見つからない場合、売主は何かしらの対策を講じる必要があります。

通常、売主と不動産会社の契約は3ヶ月ごとに更新されるため、長期間買い手がつかない場合、売主は「別の不動産会社に変更」することもあります。

売主と不動産会社の関係

別の不動産会社に変更されると、仲介手数料が入らなくなるため、不動産会社は何とかして買い手を見つけようとします。売主は物件の売却を不動産会社に依頼する際に「媒介契約」を結びます。

媒介契約を結ぶ理由は、物件の売却には専門知識が必要なことと、不動産の売買に不慣れな売主が不利な取引を避けるためです。媒介契約には3種類ありますが、ここでは詳細を割愛します。

小島解説員小島解説員

MEMO

基本的に、媒介契約は最長3ヶ月間とされています。3ヶ月経っても物件が売れない場合、売主は別の不動産会社に変更するか、現在の不動産会社との契約を継続するかを選ばなければなりません。

不動産会社としては、物件が売れないままでは広告費用などがかかり続けるため、赤字になってしまいます。したがって、できるだけ早く物件を売りたいという気持ちが強くなります。

そのため、販売開始から時間が経っている物件は値引き交渉が成功しやすいと言えるのです。

物件の引渡し日がかなり先に設定されている

物件の引き渡し日がかなり先になる場合も、値引き交渉が有利に進む可能性が高まります。

例えば、買い手がリフォームを予定している場合、引き渡し後からリフォームの日程を調整することになるため、実際に住めるようになるまでに時間がかかってしまいます。

中古住宅のメリットの一つは、すぐに住める点です。しかし、引き渡し日が先になると、このメリットが失われてしまいます。

そのため、引き渡し日が買い手の希望する日より遅れる場合は、値引き交渉の良い材料になります。

値引きしにくい中古戸建の特徴

中古戸建の値引きについてお伝えしましたが、すべての物件が同じように値引きできるわけではありません。中には、値引きの幅が小さい物件や、ほとんど値引きがされない物件も存在します。

また、売主の希望や物件に対する思い入れによっても、値引きの幅は変わることがあります。

値引きしにくい中古戸建の特徴
  1. 購入を希望している人が多い
  2. 築浅の物件
  3. 売主が住み替えを考えている

購入を希望している人が多い

購入希望者が多い物件は、値引き交渉がうまくいかない場合があります。

購入希望者が多ければ、売主は値引き額の少ない人に売りたくなるためです。

手に入れたい物件に複数の購入希望者がいる場合は、あまり値引き交渉を行わず定価で購入意思を伝える方が良いでしょう。値引きを前提に購入を考えている場合は、他の物件を探すことをおすすめします。

築浅の物件

築浅の物件は値引き交渉が難しいことが多いです。

例えば、「中古戸建の値引き体験談」の中でも、築浅物件に対して値引き交渉を行った実例がありますが、築浅物件の場合は値引きせずとも定価で売れるケースが多いため断られる可能性が高いのです。

記事の後半にある「中古戸建の値引き体験談」では、築浅物件を新築時と同等の金額で購入することになった人の例を紹介しています。

どうしても欲しい物件が築浅の場合、価格が下がるかどうか少し様子を見るという選択肢もあります。

注意

ただし、人気物件の場合は、様子を見ている間に売れてしまう可能性もあるため、駆け引きが難しくなります。

売主が住み替えを考えている

売主が住み替えを考えている場合、値引き交渉が難しいことがあります。

例えば、販売価格3,000万円の中古住宅を売りに出している売主が、3,000万円の物件に住み替えを予定しているとしましょう。

この場合、現在の物件が希望販売価格で売れないと、売主の負担が増えることになります。

中古住宅の希望販売価格 値引き交渉 新しい住み替え先の物件 売主の負担
4,000万円 値引き0円 4,000万円 0円
4,000万円 値引き200万円 4,000万円 200万円

このように、売主の負担が増える場合、値引き交渉がうまくいかない可能性が高くなります。

中古戸建値引き交渉のコツ

この章では中古一戸建を購入する際の値引き交渉のやり方を解説します。

値引き交渉のコツ
  1. 値引き交渉する時に知っておきたいこと
  2. 値引き交渉時に役立つ値引きフレーズ
  3. 値引き交渉のベストタイミング

渡邊編集者渡邊編集者

この章は値引き交渉においてとても重要な内容になっていますのでぜひ参考にしてください。

交渉する時に知っておきたいこと

値引き交渉を始める前に、事前に押さえておくべきポイントと注意点をまとめておきましょう。特に重要なのは、売主の心情や物件を手放す背景を理解することです。

売主のメリットも考慮して交渉を進める

値引き交渉で最も重要なのは、売主のメリットを考えて交渉することです。

売主は通常、一般の人であることが多いので、その立場や状況を理解しながら交渉を進めることが大切です。

MEMO

売主が物件を売りに出す理由や背景を把握するためには、不動産会社の担当者としっかりとコミュニケーションを取ることが必要です。

買い手としては、不動産会社の担当者と良好なコミュニケーションを保つことが、スムーズな交渉を進める鍵となります。普段からのやり取りを大切にし、信頼関係を築いておくことで、交渉がよりスムーズに運ぶ可能性が高まります。

住宅ローンの仮審査を受ける

住宅ローンの仮審査を受けることで、売主に対して本気で購入を考えていることを伝えることができます。

仮審査や買付証明書の提出は、買い手の真剣さを示す有効な手段です。態度や言葉だけでなく、具体的な証拠を示すことで、売主に対する信頼感を高めることができます。

住宅ローンの仮審査を行っておくことは、買い手にもメリットがあります。

住宅ローンの仮審査を行うことによるメリット
  • 借入可能額がはっきりとする
  • 物件選びに際し、予算設定ができる
  • 売主に購入する意思をアピールできる
  • 売買契約後に解約になるリスクを防げる

物件の契約前にはいつでも住宅ローンの仮審査を受けることができます。希望する物件を探し始めた段階でも、内見が終わった段階でも、売買契約を結ぶ前には必ず仮審査を受けておくべきです。

小島解説員小島解説員

大幅な値引き交渉のリスク

大幅な値引き交渉は慎重に行いましょう。

注意

物件の価格を最終的に決定するのは売主であり、あまりにも大幅な値引き要求は売主の気持ちを害し、最悪の場合には物件の販売を拒否される可能性があります。

気に入った物件の交渉が決裂しては元も子もないですよね。目的は値引きに成功することではなく、気に入った物件を契約することです。

物件の購入にあたっては、先に住宅ローンの事前審査を行い、予算を明確にし、あまりにも大幅値引きしてもらわなければ手に入らない物件ならあきらめることも大切です。

同時に交渉するのは2件まで!

また、3つ以上の物件で同時に値引き交渉を行うのはマナー違反とされ、売主や不動産会社の担当者からも敬遠される可能性があります。

2つの物件で迷っていて、価格次第でどちらかに決めたいという事情であれば同時に交渉しても問題ありませんが、それでも気を悪くする売主は存在します。

渡邊編集者渡邊編集者

気に入った物件がいくつかある場合でも、できるだけ一つ一つ対応していくよう心がけましょう。

物件の売買は高額な資産の取引であり、不動産のプロではない一般の方が売主の場合は、なおさら「好き」「嫌い」で判断されやすい取引です。

複数の物件に対して同時に値引き交渉を行うことは、信頼を損ねる可能性があるため、真摯な態度で一つの物件に集中し、誠実な交渉を心がけましょう。

値引き交渉時に役立つ値引きフレーズ

値引き交渉時に役立つ値引きフレーズの例とポイントを解説します。

内覧時にこちらの物件が気に入りました。売主様がとても丁寧に暮らしていたことが分かりました。そして、自分たちも住んでいるイメージをしたらワクワクしました。なので、売主様の物件を買わさせてください。しかし、大変申し訳ないのですが、予算オーバーなところもあり、◎◎万円に減額をお願い致します。もし宜しければ、家の補修や残置物等はこちらでさせて頂きますので、何卒宜しくお願いします。

引用 住まいエージェント

値引きフレーズのポイント
  • 物件が気に入った
  • とても丁寧に暮らしていたことが分かる
  • ワクワクする
  • 売主様の物件を買わさせてください
  • 予算オーバーなところもあり、◎◎万円に減額を希望

1〜3では、物件に対して称賛の言葉を使っています。4では買い手の意欲を示し、5では価格の引き下げ(値引き)をお願いしています。

このように、値引きの要求が行われると、売主としても応じたくなるものです。

動画リンク【現役プロが明かす!】中古戸建ての値段交渉をグンと有利にする方法

渡邊編集者渡邊編集者

必ずしも値引きに成功するとは限りませんが、すくなくともご自身(買い手)の思いと、売主への配慮は伝わってきます。
値引き交渉する上での大切な心構え
  1. 物件を褒める
  2. 売主の気持ちを察する
  3. ご自身の気持ちを伝える

この3つを自分の言葉で考え、売主に伝えてみましょう。

値引き交渉のベストタイミング

値引き交渉に最適なタイミングは、以下の3つです。

値引き交渉の3つのタイミング
  • 他に購入希望者がいない
  • 不動産会社とコミュニケーションが取れている
  • 住宅ローンの仮審査が通っている

他に購入者がいない

他に購入希望者がいなければ、値引き交渉がスムーズに進む可能性が高くなります。

逆に、複数の購入希望者がいる場合、売主は「より良い条件」を提示してくれる買い手を優先する傾向があります。したがって、購入希望者がいないタイミングを見計らって交渉することが成功の鍵です

不動産会社とのコミュニケーションが円滑

不動産会社の担当者とのコミュニケーションがしっかりと取れている状態で交渉を始めることが重要です。内見の段階で円滑な関係を築いておけば、物件に関する詳細な情報も得られ、交渉が有利に進む可能性があります。

住宅ローンの仮審査が通っている

住宅ローンの仮審査を通しておくことで、売主に対して本気で購入する意志が伝わります。仮審査を受けることで、買い手の支払い能力が示され、値引き交渉においても信頼性が高まります。

MEMO

値引き交渉を行う前に、不動産会社との円滑なコミュニケーションを確立しておくことが大前提です。これをしっかりと行ってから、適切なタイミングで交渉を進めましょう。

中古戸建は500万円の値引きも可能?

中古戸建の中には、500万円もの値引きが可能な物件も存在します。この後紹介する「中古戸建の値引き体験談」では、実際に500万円の値引きに成功したケースも紹介しています。

小島解説員小島解説員

500万円の値引きが可能な場合も

中古戸建で500万円という大幅な値引きを実現できる物件も存在しますが、これにはいくつかのポイントがあります。

販売価格の10%が目安

500万円の値引きが販売価格の10%に相当するのは、5,000万円の物件です。

注意

2,000万円や3,000万円の物件で500万円の値引きを希望するのは、現実的には非常に難しいと言えるでしょう。

ホームインスペクションの利用について

ホームインスペクションを活用したい場合は、早めに希望を伝えることが重要です。

500万円の大幅値引きを目指す際に、ホームインスペクションを利用して住宅の瑕疵を見つけ、「値引きの根拠」を正確に示すのは効果的です。

MEMO

ホームインスペクション:住宅診断士(ホームインスペクター)が住宅の欠陥や劣化状況、改修が必要な箇所や費用を診断するサービスです。費用は約5万円〜10万円程度で、診断には約5時間ほどかかります。

ホームインスペクションを利用することで、値引き交渉の材料として客観的な指標を提供できます。

ホームインスペクションには数万円の費用はかかりますが、後々物件が大幅値引きされる可能性を考えれば支払う価値のあるお金ではないでしょうか。実際多くの買主がホームインスペクションを依頼して交渉に臨んでいます。

ただし、売主の立場を考えると、物件の「欠点」を指摘されることに対して敏感になることがあります。特に値引き交渉が難航している場合、直前にホームインスペクションを提案すると、「あら捜ししてまで値下げを要求するような人には売りたくない」と思われるかもしれません。

そのため、ホームインスペクションの希望は、内覧時や物件購入の相談を行う早い段階で伝えるのがベストです。

注意

契約の直前にホームインスペクションを依頼すると、契約自体が白紙に戻るリスクが高まりますので、注意が必要です

500万円もの高額値引き!交渉のポイント

渡邊編集者渡邊編集者

大幅な値引き交渉を検討している場合のコツを解説します。10%以上、あるいは500万円以上の値引きを希望する場合は、以下のポイントを最低限押さえておくことが重要です。
値引き交渉に成功するためのポイント
  • 事前に住宅ローンの仮審査を受けておく
  • 値引き交渉は一回だけ
  • 長期間売れ残っている物件を探す

大幅な値引き交渉は成功しない場合も多いですが、それでもできる限りの準備をしておくことが重要です。

事前に住宅ローンの仮審査を受ける

住宅ローンの仮審査を受けることで、売主は買い手がどの程度の支払い能力があるのか見極めることができます。仮審査を受けずに大幅な値引きを成功させたとしても、審査に通らなければ意味がありません。

また、用意周到にローン審査を受けて交渉に臨む姿勢は売主に本気度を示し、購入の意思が固まっているのだなと信頼感が増すでしょう。

小島解説員小島解説員

値引き交渉は一回だけ

大幅な値引きを目指す場合、交渉を何度も繰り返すのは避けましょう。一度の交渉でしっかりと提案を固めることが大切です。

長期間売れ残っている物件を探す

公益財団法人東日本不動産流通機構(通称レインズ)の報告によれば、中古戸建物件は新規登録から契約まで約3ヶ月かかるのが一般的です。

もし3ヶ月以上売れ残っている物件があれば、売主や不動産会社は何とかして買い手を見つけたいと考えている可能性が高いです。このような物件を対象に、早めの引渡しを条件に大幅な値引き交渉を試みると、成功する可能性が高まります。

登録から成約に至る日数

新築戸建物件 中古戸建物件
2011年 64.9日 83.2日
2012年 67.4日 87.5日
2013年 68.7日 88.5日
2014年 67.8日 88.4日
2015年 71.9日 89.6日
2016年 68.4日 92.4日
2017年 70.7日 91日
2018年 75.1日 96.2日
2019年 87.6日 100.1日
2020年 89.7日 114.1日
2021年 69.3日 95.2日

参考 公益財団法人東日本不動産流通機構 首都圏不動産流通市場の動向(2021年度)

中古戸建の値引き体験談

ここからは実際に中古戸建の値引き交渉に成功した例・成功したものの不満が残った例などをご紹介します。

値引きは金額が大きいから成功というわけではなく、周辺の類似物件の相場と比べたり、トータル費用を加味した上での満足感などで成功かどうかが決まります。

小島解説員小島解説員

渡邊編集者渡邊編集者

後悔しないためにも経験談を参考に今後の値引き交渉に活かしてみてください!

100万円の値引きに成功

全額現金一括という珍しいケースで、スムーズに交渉が通った例です。

ローン審査の可否を気にせず確実に契約をまとめることができるので交渉材料としてはとても強いカードです。

    値引きの理由は何と言いましたか?または、 言われましたか?

現金一括で購入したいが、当初の価格だとやや厳しいので、もう少し下げてくれれば、全額現金で買うと申し出た。

    提示価格いくらに対する、いくらの交渉がありましたか?

3780から3680万円への交渉

    サービスの満足の理由を教えて下さい

誠実な対応だった。火災報知機がついていないとのことで、新規で購入したが、実際はついていたので、その金額を賠償してくれた。

引用:マンションレビュー

値引き材料 現金一括払い
売出価格 3,780万円
値引き額 3,680万円
値引き率 2.6%
買い手感想 値引き成功

200万円の値引きに成功

売主との信頼関係を築き、想定よりも大幅な額の値引きに成功した事例です。断られることを考慮して先に大きめの値引きを打診したことが功を奏しました。

また、売主が「この人に買ってもらいたい」と思ってもらえる人間関係を築くうえでも、下記の心構えは大切と言えます。

値引き交渉する上での大切な心構え
  1. 物件を褒める
  2. 売主の気持ちを察する
  3. ご自身の気持ちを伝える

    値引きの理由は何と言いましたか?または、 言われましたか?

売主様がお家を大事にされていて、家を大事にしてくれそうな相手にしか売りたくないと考えられていたため。他に買い手がいたみたいですが、買い取り価格というより、そちらを重視して頂きました。

    提示価格いくらに対する、いくらの交渉がありましたか?

5250万→5100万にして頂こうと思って、5250万→5050万(断られる想定)→5100万で交渉しようと思ったら、5050万円でOKを頂きました。

    サービスの満足の理由を教えて下さい

こちらのミスで印鑑を忘れた時があったのに、契約のためとは言え、その場で印鑑を買いに走って頂くなどの親切な対応をして頂きました。

引用:マンションレビュー

値引き材料 家を大事にしてくれそう
売出価格 5,250万円
値引き額 5,050万円
値引き率 3.8%
買い手感想 値引き成功

500万の値引きだったが結果的に損した

記事でも紹介したように、500万円の大幅な値引きに成功したケースもありますし、平均的な値引き率である10%を達成した方もいます。ただし、一部の方は物件購入時期が高騰期であったことや、事前の調査不足が影響して、値引きに対する後悔を感じていることもあります。

    値引きの理由は何と言いましたか?または、 言われましたか?

今なかなか売れない時期で購入してもらえればさらに何パーセントか値引いくれるといわれ購入を迷っていたが購入した。

    提示価格いくらに対する、いくらの交渉がありましたか?

提示価格が5000万から500万引いてくれると提示されたのでこの機会購入したいと思いあまり考えずに購入してしまった。

    サービスの満足の理由を教えて下さい

説明があまり詳しくなかったのとこちらの疑問点にあまり真摯に答えてくれずにあいまいな答えが多く不満が残った。

引用:マンションレビュー

値引き材料 なかなか売れない時期だから
売出価格 5,000万円
値引き額 4,500万円
値引き率 10%
買い手感想 値引き成功

500万円の中古物件の値引きに成功した体験談・知恵袋

「中古住宅  値引き 体験談」と検索すると、掲示板やブログに体験談が多く見つかります。

また、Yahoo!知恵袋では実際の体験談よりも、物件ごとの値引き額について質問しているケースが多く、具体的な実体験に基づく情報は少ない傾向があります。

以下の記事では、掲示板やブログに掲載された体験談をもとに、中古住宅購入時の値引きの過程や値下げ率に関する情報をまとめています。

渡邊編集者渡邊編集者

中古物件の購入を検討している方には、実際の値引き体験が参考になると思います。

よくある疑問

中古戸建を購入する際に気になる疑問を解説します。

築年数がかなり経過している中古住宅の購入

中古住宅を購入する際、特に重要なのはその物件があとどれくらい使用できるかという点です。

木造住宅の場合、法定の耐用年数は22年ですが、築20年の物件に対して「数年で住めなくなってしまうのでは?」という不安が生じるのも理解できます。

MEMO

ただし、法定耐用年数はあくまで一般的な基準に過ぎません。実際には、国土交通省のデータによると、2011年時点での木造建築の平均寿命は65.03年です。適切なメンテナンスを行うことで、かなりの長期間住むことが可能です。

とはいえ、中古物件の場合は、実際にどの程度メンテナンスが行われているかを判断するのが難しいのも事実です。

築年数が経過している物件については、ホームインスペクションなどを活用して物件の状態を確認することをおすすめします。

中古住宅のチェックポイント

初めて中古住宅を購入する人は、以下の内容について必ず確認するようにしてください。

確認箇所 確認内容
風通し 部屋の窓を開けて、風通しがいいかどうか確認する。
騒音 日中や夜中、どの程度の騒音を感じるか確認する。
また平日や土日などによっても違いが出るので、
できる限り確認する。
部屋の向き 日当たりについて確認する
ニオイ 実際に現地ではないと確認できないのと、
ニオイは人によって差があるのでニオイに敏感な人は忘れないように
水回り 水漏れがない確認する
シミが出来ていたら、水漏れしている可能性あり
家の傾き ビー玉を用意し、家の傾きを確認する
収納 収納の広さとカビについて確認する
床下 床下収納や畳の下などを確認。
カビの発生しやすい場所であるので注意が必要。
またシロアリなどの害虫についても確認する
周辺環境の確認 治安の良し悪しと街灯の有無などを確認する
家族全員で確認 一人で確認すると見落としがちな事柄も
家族で確認することで確認漏れが少なくなる

まとめ

中古一戸建ての値引きについて、さまざまな観点から解説しました。値引きの目安としては10%を目標にし、過度な交渉は避けることが成功のカギです。

また、売主が物件を手放す背景や心情に寄り添うことも重要です。地域や築年数によって値引き率が変わるため、事前に物件の相場を確認することも忘れずに行いましょう。

さらに、中古物件の値引きには避けるべきポイントもあるため、慎重なアプローチが必要です。

記事内で紹介した値引き交渉のポイントを参考にし、希望する価格で物件を手に入れられるよう、ぜひ記事の内容を見直してみてください。

小島解説員小島解説員