- 囲い込みをされると売主はもちろん買主も不利益を被る
- 三井のリハウスなど、主に財閥系の大手不動産が囲い込みをする
- 囲い込みを防ぐには複数の仲介会社に並行して売却を依頼する
不動産会社に自宅売却を依頼すると不動産会社は仲介業者としての媒介契約を結びます。 このとき、少々分かりにくいのですが「囲い込み」という方法を用いるため、言葉巧みに誘いこむ業者が時々います。
囲い込みをする不動産会社と契約をすると不動産売却がスムーズに流れないなど損失を被る可能性があります。 囲い込みとは何か、どのような弊害があるか、これを解説しましょう。
買主・売主双方が損をする「不動産の囲い込み」とは
渡邊編集者
小島解説員
囲い込みと両手仲介の違い
まず不動産会社が目指す仲介の方法に「両手仲介」があります。 不動産売却をする時には「売り手=売主」「買い手=買主」が存在します。
1社の不動産会社が売主と買主双方の仲介を行い双方から仲介手数料を受け取る、不動産会社の仲介として理想的なのがこの両手仲介です。 不動産会社には両方から仲介手数料が入り多くの収入になるということからも良い仲介方法です。
この「両手仲介」を目指す中で他不動産会社の仲介を阻み、売主から売却依頼があった不動産物件を他社に取り扱わせないようにすることがあります。 これを不動産業界で「囲い込み」と呼びます。
不動産の囲い込みが行われる理由
渡邊編集者
小島解説員
三井のリハウスは囲い込み率21.2%
2015年4月13日に発売されたダイヤモンドオンラインで「大手不動産が不正行為か流出する“爆弾データ”の衝撃」という内容の記事が世に出ました。内容としては、三井のリハウス(三井不動産リアルティ)で囲い込みが行われている実態が出版社の調査で判明したというものです。
記事によれば、2013年度の調査の結果、三井のリハウス(三井不動産リアルティ)による囲い込み件数は40件あり、囲い込み率は21.2%にも上るということです。かなり情報は古いので今現在囲い込みが行われているかは定かではありません。
小島解説員
不動産の囲い込みをされるとどうなるの?
個人である売主には1社のみによる「囲い込み」によるデメリットはよくわからないところがあります。 囲い込みをされると不動産売却はどのような流れとなるでしょうか。 具体的な弊害などを知っておきましょう。
販売期間が長期化する
複数の不動産会社に売却依頼をすれば多くの人の目に触れます。 多くの購入希望者が売却物件データを見るのですから、早く売れる可能性が高くなりますね。
囲い込みをされると1社の1営業担当者が販売物件データを持ち、出し渋る方法を取ります。 これでは売れませんね。 複数の業者に依頼する以上に販売期間が長期化するため、売却をして退去、転居するという予定が大きくずれ込むことになってしまいます。
詐欺、横領、背任などの罰則の恐れがある
現在ではまだ「囲い込み」を罰する法則は明確ではありません。 両手仲介が法律違反ではないからです。
しかし販売に伴う業者や営業担当者のやり方はモラルすれすれのところが多く指摘されており、収益のために違法といえるやり方で営業活動、販売活動を行うため、売主にも買主にも利益とならないばかりか、一歩間違えれば罰則の可能性も出てきます。
勘違いしがちだが囲い込み物件はお得ではない
囲い込み物件による売却は売主にも買主にも得にはなりません。 買い手は囲い込み物件を「お得です」と売られることがありますが、仲介手数料を多く取る手口のひとつにすぎません。
まず売却物件が売れずに価格が下がることがあります。 売主にはこれが大きな痛手となります。 売却価格を下げたところで囲い込みをしている不動産会社は少しも損失にならないのです。 売主と買主双方から仲介手数料が入るのですから。 この点を注意しましょう。
レインズに出されていても囲い込みはある
不動産会社に仲介依頼をすると不動産業界が使う「レインズ」という物件情報公開ネットワーク間で情報を共有します。 複数の不動産会社が売買に携われる物件はレインズに登録されていて、購入希望者がいれば売主は声かけをしてきた不動産会社を通じて取引することが可能です。
するとレインズに出されていれば一見安心と思われますね。 実はレインズに登録された物件にも囲い込みがあります。 これを解説します。
一般媒介による囲い込み
レインズ登録と公開が義務付けられているのは「専任媒介」と「専属媒介」の物件です。 「一般媒介」の物件にはレインズ登録の必要がありません。
一般媒介の場合には売主にも不動産会社側にも販売方法の制限がないため、違法とならないやり方で囲い込みをするには、レインズに登録をしない一般媒介の仲介方法を利用して他社を受け入れないやり方があります。
売り止めと囲い込み
レインズに登録し情報を公開している物件を囲い込みする方法として、売り止めがあります。 公開はしているものの「販売を一時中断」するやり方です。 公開されている物件に問い合わせがあっても「現在商談中です」「他の方からお話が入っています」という返答で販売をしません。
情報は登録し公開しているので法令は守っており違法とならないのですが、囲い込みを狙う場合には商談も入っていないケースでこれが使われることが多く1業者が独占するために使う手口です。
大手も安心できない
こういう「囲い込み」をしなければ売却できない、ノルマが達成できない業者は個人か零細業者だ!と思ってしまうかもしれません。 小さな不動産会社ではなく有名な大手不動産会社であれば大丈夫だと知名度が高い不動産会社に売却依頼をして、あまり説明も聞かずに契約してしまうこともあるのでは。
しかし大手の不動産会社も囲い込みという点では安心できないのです。 不動産会社ほど、むしろ売り上げを安定させることに追われています。 目標として掲げた数字を達成するために囲い込みは当然とされているのが業界内の常識ともいわれます。
業者内でしか見られないレインズですが、売れてもいいはずでは?と考えられる物件がいつまでも公開のみされて残っているケースがよくあります。 これは「売り止め」をしているからです。 大手が持っている物件でも、これは多々あるのです。
不動産の囲い込みを対策するには?見分け方や注意点を解説
売主も買主も囲い込みの特徴を知っておいた上で対策を講じたいですね。 やり方が一見普通の仲介なので、売主も買主も囲い込みは見分けにくいという問題があります。 どう見分けるか、どう避ければいいか、これを解説します。
売買仲介実績の平均料率が上限額を超えている
両手仲介を盛んに行う不動産会社は囲い込みを多く行っている可能性があります。 不動産売買仲介手数料は一定の平均料率があります。 これを一度チェックしましょう。
不動産売買仲介手数料は、宅建業法で定められています。 「3%+6万円(消費税別)が上限」です。 これを超えている不動産会社は囲い込みの可能性があると考えましょう。 実はこのラインを超えているのは大手不動産会社が多いのです。
一般媒介で出す
囲い込みをする目的は「両手仲介」により数字を達成することです。 大手もこの目的で囲い込みを利用します。 ではどうすればいいか?大手に依頼する場合に「一般媒介」を使います。
たとえば5社に一般媒介で依頼をすれば5社のうち4社が囲い込みでの売り止めを目論んだとしても、1社は囲い込みを考えずにレインズに登録公開をします。 それにより他社の囲い込みを封じ込めることができます。
不動産会社の評判や口コミで検索して調べる
最近は不動産会社の評判や口コミをネットで検索できます。 これを大いに利用しましょう。
【(業者名) 囲い込み】【(〇〇不動産) 囲い込み】
などで検索し、ヒットしたら要注意ですね。 ( )内は検討している不動産会社の名前を含み、〇〇店など柔軟なキーワードで検索してみましょう。
専任媒介のリノベーション物件や新築建売がないかを調べる
囲い込みの中で物件を商品化して「卸す」やり方があります。 この方法を使っている場合、その不動産会社の持ち物件には「専任媒介のリノベーション物件」「専任媒介の新築建売」が見つかる可能性が高くなります。
セールスポイントが買取保証になっている仲介業者
不動産の販売に「買取保証」があります。 これがセールスポイントになっている不動産会社や、買取保証をより推してくる業者は注意です。
買取をして再販売するやり方は不動産会社にとってはハイリスクですが、その分収益も大きくなります。 そのため物件をより安く仕入れようとします。
まとめ
不動産会社は複数の業者で情報を共有し売主にも買主にも有益な方法で売買をするべきですが、自社の数字を上げるために行う「囲い込み」が慣習化しています。
契約時に見抜くことは難しいのですが一度囲い込みの業者と担当者に物件を取り込まれてしまうと、販売期間が長引き売主にも買主にもメリットはありません。 見抜く方法をおさえて、囲い込みを回避しましょう。