専任媒介契約した家が売れない!その理由と早期売却の戦略を紹介

専任媒介契約で売れない


この記事を書いた人
小島 優一
宅地建物取引士

宅地建物取引士、2級ファイナンシャルプランニング技能士。生命保険会社にてリテール業務に従事した後、2014年に不動産仲介会社であるグランドネクスト株式会社を設立。 2021年より幻冬舎ゴールドオンラインにて不動産を通じて財産を守る、増やす、残す記事を連載している。 >> 詳細はこちらから

この記事のまとめ
  • 専任媒介契約で3ケ月以上売れない時は契約を見直す時期
  • 土地の購入に消費税はかからない
  • 専任媒介契約で売れない時は不動産の選び方を見直す

専任媒介契約の期間は基本的に3か月です。この期間内に家が売れることが理想ですが、思うように進まないケースもあります。契約が更新され、6か月以上経っても売れない場合、売却が長期化してしまう可能性が高まります。「専任にしたのに、なぜこんなに時間がかかるの?」と不安になるのも無理はありません。なぜ売れないのか、不動産会社の販売戦略や物件の価格設定に問題があるのかもしれません。早期売却に向けての戦略は専任媒介契約を更新しないことや、解除すること、一般媒介に変更するなど様々な対応策があります。

本記事では、専任媒介契約で家がなかなか売れない理由と、早期売却のために見直すべきポイントについて詳しく解説します。

専任媒介契約でなかなか売れないと悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

小島解説員小島解説員

専任媒介契約したら家が売れない!いつまでも売れない理由は?

不動産会社が囲い込みをしているから

「専任媒介契約を結んだら家が売れない」という状況に陥る理由のひとつに、不動産会社による「囲い込み」が挙げられます。

「囲い込み」とは、不動産会社が売却を依頼された物件に対して、他社の買い手からの問い合わせや取引を意図的に制限する行為を指します。

専任媒介契約や専属専任媒介契約では、物件の販売は契約した不動産会社に一任されるため、その会社が自社で買主を見つけようと、他の不動産会社や買主への情報提供を遅らせたり、無視したりする場合があります。

こうした囲い込みが行われると、結果的に物件の露出が減り、売却の機会が損なわれてしまいます。

囲い込みが発生する理由の一つは、不動産会社が「両手取引」を狙っていることです

両手取引とは、売主と買主の両方から手数料を得られる取引形態のことで、不動産会社にとっては利益が最大化できるため、囲い込みを行って自社で買主を見つけようとすることがあります。

しかし、これによりなかなか売れない状態が続いたり、売主が最適な価格で売却できなかったりするリスクが高まります。

こういった問題を解決するため、国土交通省は2025年から囲い込みに対する規制を強化する方針を示しています。

この規制により、不動産会社が他社からの問い合わせを不当に拒否したり、意図的に取引を遅らせたりすることが難しくなります。

新しい制度の導入により、売主はより公平で透明な売却プロセスを享受できるようになり、囲い込みのリスクが減少し、物件が売れやすくなることが期待されています。

不動産会社が販売を積極的に行っていないから

物件が売れない理由の一つとして、不動産会社が販売活動を積極的に行っていない可能性があります

専任媒介契約や専属専任媒介契約を結んだ場合、売主はその不動産会社に全ての販売活動を委ねることになりますが、その会社が必ずしも全力で販売活動を行うとは限りません。

例えば、スーモやアットホームなどのポータルサイトや自社のウェブサイト、店舗の看板、ポスティングなどの販促活動がほとんど行われないことがあります。

その上、公開される物件情報自体も、適切な内容が十分に掲載されないことが多いです。

よく見られるのは、暗い時間帯に撮影された外観写真や、間取り図だけが掲載された不十分な物件情報です。

こうした不完全な情報では、購入希望者に魅力が伝わらず、他社の不動産業者も新しい顧客を引き寄せることが難しくなります。

そのため、物件の知名度が上がらず、売却が遅れることになります。

本来であれば、レインズを通じて他社とも連携し、広範なネットワークを活用することで、より早く、より高い金額で物件を成約できる可能性があるにもかかわらず、買い手に物件が認識されず、問い合わせや内見の数が少なくなってしまうのです。

また、不動産会社が他に優先したい物件を抱えている場合、そちらに力を入れて販売活動を行うこともあります

この場合、あなたの物件は後回しにされ、適切なタイミングでの販売が遅れることもあります。

不動産会社の営業力や担当者の熱意が、物件の売却スピードに大きな影響を与えるため、販売活動の積極性は非常に重要です。

もし「販売活動が思ったよりも進んでいない」と感じる場合は、担当者に具体的な進捗状況を確認し、広告戦略や販売計画の見直しを依頼することが効果的です。

場合によっては、媒介契約の変更を検討することも考慮すべきかもしれません。

小島解説員小島解説員

価格が相場と合っていない

物件が売れない大きな理由のひとつに、提示されている価格が市場の相場と合っていないことが挙げられます

特に、売主の希望価格が高すぎる場合、不動産会社が適正な市場価格を提示しても、それを受け入れずに相場以上の価格で販売を進めることがあります。

しかし、周辺の同様な物件と比較した際に、価格が明らかに高すぎると、買主は敬遠してしまい、結果的に内覧希望者が減少し、売却のチャンスを逃してしまいます。

また、相場を無視した価格設定を続けていると、長期間売れ残るリスクが高まり、最終的には売却価格を大幅に下げざるを得なくなる可能性があります。

市場に長く残っている物件は、「何か問題があるのではないか」と買主に疑念を抱かせるため、たとえ価格を下げてもイメージが悪くなり、さらに売りにくくなることもあります。

適切な価格設定を行うことで、買主の関心を引きやすくなり、スムーズな売却につながる可能性が高くなるため、売却活動の初期段階で市場の相場に基づいた価格を設定することが非常に重要です。

山口編集者山口編集者

1軒の不動産会社だけですぐに契約を結ぶより、数件の不動産会社に出向いて市場価格を聞いた方が適正価格を判断できるのでおススメです。

家の仕様が狭いニーズにしか対応できないから

物件の仕様が特定のニーズにしか対応できない場合、売却が難しくなることがあります。

たとえば、間取りが非常に狭かったり、特定のデザインや設備が施されている場合、購入希望者の選択肢が限られてしまいます。

このような物件は、一般的な家族のライフスタイルに合わないことが多く、特定の趣味やライフスタイルを持つ購入者にしか響かない可能性があります。

さらに、家の仕様が特定のニーズに特化していると、一般的な購入者の興味を引くことが難しくなります。

たとえば、大きなリビングやダイニングルームを必要とする家族にとって、狭い間取りの物件は魅力的ではありません。

逆に、デザイン性の高いスタジオタイプの部屋は、単身者やカップルには好まれるかもしれませんが、ファミリー層には受け入れられにくいことがあります。

このように、家の仕様が特定のニーズにしか対応できない場合、ターゲットとなる購買層が限られ、販売の機会が狭まるため、幅広いニーズに応える間取りや仕様を持った物件の方が、スムーズに売却できる傾向があります。

したがって、物件を売却する際には、より多くの人々にアピールできるよう、ニーズに合った仕様を考慮することが重要です。

なかなか売れなかったら、どうしたらいい?

専任媒介契約を結んでから3か月以上が経過しても家が売れない場合、契約の見直しを考える時期です。

売却活動が思うように進まない場合には、契約期間中に途中解約を検討する、解約を考慮すべき具体的なケースを把握する、別の不動産会社と新たに契約を結ぶ、または一般媒介契約に変更するなどの選択肢があります。

これらのアプローチを検討することで、より効果的な売却活動につなげることができるでしょう。

小島解説員小島解説員

契約期間中に途中解約をする

専任媒介契約中に不動産会社の業務に問題が生じた場合、途中で契約を解約する選択肢もあります。

このような解約は、契約の内容を守られなかった場合に有効です。以下は、解約を検討するべき具体的なケースです。

解約を検討すべきケース
  • 広告活動の不履行: 物件を売却するために必要な広告や宣伝活動を全く行わない場合は、契約解除の理由になります。例えば、レインズやポータルサイトへの掲載がなされないといった状況です。
  • 虚偽の情報提供: 他の不動産会社に対して「すでに売買が成立した」と虚偽の情報を流す行為も、信頼関係を損なう重大な違反です。このような場合も、途中解約を検討することができます。
  • 活動報告の不履行: 2週間に1度の活動報告がなされない場合も、解約の理由となります。この報告は、売主が現在の販売状況を把握するために非常に重要です。
  • 登録義務の不履行: 専任媒介契約締結後、7営業日以内に物件情報をレインズに登録しないという義務を怠った場合も、契約解除の申し出が可能です。

このような問題が発生した場合、売主は不動産会社に対して契約解除を申し出ることができ、違約金やペナルティを支払う必要はありません。

また、契約違反により損害が発生した場合には、不動産会社に対して損害賠償を請求する権利もあります。

不動産会社に明らかな落ち度があった場合は、躊躇せず専任媒介契約の解約を検討し、新たな選択肢を模索することが重要です。

この判断が、物件売却の成功に向けた第一歩となるでしょう。

小島解説員小島解説員

別の会社と契約を結ぶ

専任媒介契約の期間が満了した後、他の不動産会社との契約を結ぶことを考慮するのは、非常に理にかなった選択肢です。

現在の不動産会社の販売活動に不満がある場合、より効果的な営業を行う企業に切り替えることで、売却の可能性を高められるかもしれません。

専任媒介契約の契約期間は、法令により最大で3ヶ月と定められています(宅地建物取引業法第34条の2第3項及び4項)。契約満了後には自動的に更新されることはなく、売主は自由に他の不動産会社との契約を結ぶことができます。

このため、販売活動に不満がある場合は、契約が満了するのを待って新しい会社に切り替えることができます。

専任媒介契約の期間中に他社と契約を結ぶと違約金が発生する可能性がありますが、期間満了後であればその心配はありません。

安心して新しい契約を進められるのが大きなメリットです。

専任媒介契約の期間が終われば、自由に新しい不動産会社を選べます。

契約を更新しないで新しい会社と契約することで、自分のニーズに合ったパートナーを見つけることができます。

一般媒介契約に変更する

専任媒介契約から一般媒介契約に切り替えることは、効果的な販売戦略の一環です。

一般媒介契約に変更することで、売主は複数の不動産会社と同時に契約を結び、各社がそれぞれの方法で販売活動を行います。

この競争により、より多くの買主をターゲットにすることが可能になり、販売活動が活性化されることが期待されます。

一般媒介契約の契約期間は、特に法的な制限がなく、柔軟に設定できるのが特徴です。

多くの不動産会社では3ヶ月の更新が一般的ですが、自動更新条項を設けることもできるため、売主にとって利便性の高い契約形態となります。

契約が終了する際に、専任媒介契約を終了し、すぐに一般媒介契約に移行することも可能です。

これにより、売主は市場の動向に応じた適切な戦略を取ることができ、より迅速に買主を見つけるチャンスが広がります。

また、一般媒介契約では複数の不動産会社からの活動報告を受け取ることができるため、市場の情報を多角的に把握しやすく、販売活動の改善が迅速に行えます。

各社の異なるアプローチを通じて、ターゲット層に合わせた販売が実現しやすくなるのも大きなメリットです。

このように、一般媒介契約に変更することで、販売活動が多様化し、買主が見つかる可能性が高まります。

売主は自分のニーズに合わせた不動産会社を選び、信頼できるパートナーと共に効果的な売却活動を進めることができるでしょう。

専任媒介契約で売れる不動産会社の見極め方

不動産を売却する際、どの不動産会社に専任媒介契約を結ぶかは非常に重要です。

適切な会社を選ぶことで、スムーズな取引と満足のいく売却価格を実現することができます。

ここでは、売れる不動産会社を見極めるためのポイントをご紹介します。

山口編集者山口編集者

これから不動産選びをする方は是非参考にしてください。

1. 実績と信頼性を確認する

まず、会社の実績を調査しましょう。

過去の売却事例や成功率、売却までの平均期間などを確認することで、その会社の信頼性を評価できます。

また、口コミやレビューも参考にすると良いでしょう。

実際の顧客の体験談は、会社のサービスの質を知る手助けになります。

2. 担当者のコミュニケーション能力

専任媒介契約を結ぶ際には、担当者とのコミュニケーションが不可欠です。

担当者が親身になって話を聞き、提案をしてくれるかどうかは、売却活動の成功に大きく影響します。

初回の面談時に、質問に対する返答や情報提供のスピードを観察することで、その担当者の姿勢を判断しましょ

3. マーケティング戦略の明確さ

不動産会社のマーケティング戦略が明確であるかどうかも重要なポイントです。

専任媒介契約を結ぶ際には、どのように物件を宣伝するのか、どの媒体を利用するのか、販売活動の計画が具体的であることを確認しましょう。

効果的なマーケティングが行われることで、より多くの買主にアプローチすることができます。

4. サポート体制の充実度

不動産の売却は複雑なプロセスです。

契約後のサポート体制が充実しているかも見極めるポイントです

契約後の定期的な進捗報告や、必要な手続きのアドバイスが受けられるかどうかを確認しておくと安心です。

5. 費用と条件の透明性

最後に、媒介手数料やその他の費用についての透明性も重要です。契約前に全ての費用について明確な説明を受け、納得した上で契約を結ぶことが大切です。

隠れた費用がないかどうかを確認することで、後々のトラブルを避けることができます。

これらのポイントを踏まえて不動産会社を選ぶことで、専任媒介契約の成功率を高めることができます。

信頼できる不動産会社と協力して、スムーズな売却活動を進めましょう。

専任媒介契約を途中で解約する場合の注意点

専任媒介契約は途中で解約することが可能ですが、解約する理由によっては注意が必要です。

基本的に、不動産会社の不適切な対応が原因で解約する場合、違約金は発生しませんが、売主側の都合で解約する場合は違約金が発生することがあります。以下に具体的なケースを挙げて説明します。

違約金がかからないケース

不動産会社の義務違反や不正行為が原因で契約を解約する場合、売主は違約金を支払う必要はありません。

例えば、不動産会社が以下のような行為を行った場合です。

  • 宅建業法違反:レインズへの物件登録を怠る、定められた報告を行わないなど、専任媒介契約に基づく義務を果たしていない場合。
  • 信義則違反:重要事項を故意に隠したり、不実の説明を行った場合も違約金はかかりません。

売主都合での解約

一方、売主の個人的な理由で契約を途中で解約する場合は、不動産会社に対して違約金が発生することがあります

例えば、販売活動が順調に進んでいるにもかかわらず、売主が事情変更により売却を取りやめる場合です。

このようなケースでは、不動産会社の活動を無効にすることになるため、契約内容に基づいて違約金の支払いが求められることがあります。

専任媒介契約を解約する際は、契約書の内容をよく確認し、必要に応じて専門家に相談することが重要です。

まとめ

専任媒介契約を結んでも、家が売れない理由は多岐にわたります。不動産会社の囲い込みや販売活動の消極性、価格設定の問題、さらには物件の仕様が狭いニーズに限定されていることが影響することがあります。

売れない場合は、契約の見直しや解約、他社との契約、新たな媒介契約の選択肢を検討することが重要です。

また、信頼できる不動産会社を選ぶためには、実績やコミュニケーション能力、マーケティング戦略、サポート体制、そして費用の透明性をしっかり確認しましょう。

これらのポイントを踏まえ、専任媒介契約を有効に活用し、スムーズな売却を目指していきましょう。