- 不動産仲介業は不動産を売却もしくは賃貸する際に以下に向けて取引・業務を行うこと
- 不動産仲介契約には3つの種類がある
- 複数の不動産会社の中から、査定価格の根拠・営業手腕・相性などを見極めて厳選することが大切
不動産を売却したい場合、特に初心者の方にとっては、どこから手をつければ良いのか?思案に暮れると思われます。「高く売却するには、どうすればいいの?」、「不動産会社を選択するには、どうすればいいの?」と困っておられる方はいませんか?
実は3種類の媒介契約のメリット・デメリットを把握することにより自身の不動産に適した媒介契約を締結することができ、高く売却することができます。また不動産売却一括査定サイトを利用することにより自身に適した不動産会社を選択することができます。
小島解説員
山口編集者
また売却の流れを把握することにより、売買契約・引渡しまでスムーズに進めることができますので、ぜひ参考にしてください。
不動産仲介業とは
不動産仲介業は不動産を売却もしくは賃貸する際に以下に向けて取引・業務を行うことです。
- 売主と買主との仲介役として売買契約の成立
- 貸主と借主との仲介役として賃貸借契約の成立
その業務を開始するにあたり依頼者と不動産仲介業者との間で、媒介契約を締結します。
不動産仲介業の利益は売買契約や賃貸借契約を成立させ、不動産の引渡し・貸出しを完了させた場合、その成功報酬としての仲介手数料が主になります。
不動産仲介業はその名の通り、売主や貸主、買主や借主の間を取り持つ役割を担っています。不動産売買の場合、基本的には売主も買主も不動産取引の経験がそう多くなく、関連する法律に不慣れであるといって良いでしょう。
そこで双方の間に立ち、取引がスムーズに進むようサポートする役割が必要となってきます。それが不動産仲介業者です。
不動産仲介業者は、売主や貸主、買主や借主の双方の意見や条件を考慮し、物件の査定や選定、条件に合う物件の提案、契約書類の作成や重要事項の説明など、様々な不動産に関する活動を法律に則った手続きでサポートしています。
総合仲介業とは?仲介業との違いを説明
不動産仲介業が売主や貸主、買主や借主の間をつなぎ、取引をスムーズに進める業務に特化しているのに対し、総合仲介は不動産業界全体に関わる幅広い業務を提供する点で異なります。
総合仲介を行う企業は、仲介業務だけでなく、土地や建物の開発、不動産管理、賃貸経営、流通など多岐にわたるサービスを展開しており、その仕組みとして、個別の仲介案件に加えて、不動産の購入や売却に伴う資産運用アドバイス、リフォーム提案、建築計画の立案、さらには契約後のアフターフォローまで包括的なサポートを提供します。
たとえば売買仲介では、物件の販売活動や契約手続きに加え、リフォーム提案や資産運用のアドバイスなども行います。
このような包括的な対応力が総合仲介の強みであり、三井不動産リアルティ(三井のリハウス)、東急リバブル、住友不動産販売(住友の仲介ステップ)、野村不動産グループなどの大手企業がその代表例として挙げられます。
不動産仲介の仕組み
不動産仲介業は不動産に関する高度な専門性を必要としますので、宅地建物取引業法の認可を受けることが義務付けされています。
また事務所の開設箇所により以下の認可する「宅地建物取引業」の免許を取得しなければなりません。
- 2以上の都道府県に設置する場合:国土交通大臣
- 1都道府県内のみに設置する場合:都道府県知事
扱う不動産の主な内容としては、以下の通りです。
- 事業用不動産:事務所ビル・商業施設・収益アパート・マンションなど
- 個人用居住不動産:戸建て・区分マンションなど
業務の概要としては依頼者の不動産を調査し、売却価格や賃貸料を決定します。その際の価格設定が重要な業務の一つとなります。立地・景気動向などを鑑みながら、依頼者の納得を得た上で、売却活動や賃貸活動を開始します。
次に様々な案内広告の手法を利用することにより、早期の顧客獲得に努めます。
顧客が見つかり契約まで至った際も法律に則った手続き(契約書や重要事項説明書の作成など)にてサポートを行い、後日トラブルが生じない様に配慮します。
不動産仲介契約には3つの種類がある
不動産仲介(媒介)契約には一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約の3種類があります。
渡邊編集者
一般媒介契約
一般媒介契約のメリット・デメリットを下表にまとめます。
メリット | デメリット |
・複数の不動産会社と売却の契約を締結することが可能。 ・売主が、買主を見つけてきた場合(自己発見取引)、仲介手数料を支払う必要は無い。 |
・不動産会社による売主への営業活動の報告義務が無く、活動内容が不透明。 ・依頼した不動産会社に対して、個別に確認の連絡を行う手間がかかる。 |
専任媒介契約
専任媒介契約のメリット・デメリットを下表にまとめます。
メリット | デメリット |
・窓口を一本化できるので、連絡は楽。 ・売主が、買主を見つけてきた場合(自己発見取引)、仲介手数料を支払う必要は無い。 ・不動産会社から売主へ、2週間に1度の割合で営業活動の報告義務があり、営業進捗状況を把握し易い。 |
・不動産会社1社とのみ契約を締結することができず、変更したくても3か月間は不可能。 ・不動産会社による囲い込みの可能性がある。 |
専属専任媒介契約
専属専任媒介契約のメリット・デメリットを下表にまとめます。
メリット | デメリット |
・窓口を一本化できるので、連絡は楽。 ・不動産会社から売主へ、1週間に1度の割合で営業活動の報告義務があり、営業進捗状況を把握し易い。 |
・不動産会社1社とのみ契約を締結することができず、変更したくても3か月間は不可能。 ・売主が、買主を見つけてきた場合(自己発見取引)でも、仲介手数料を支払う必要がある。 ・不動産会社による囲い込みの可能性がある。 |
不動産仲介手数料について
不動産会社と媒介契約を締結し買主を見つけてもらい、売買契約・引渡しまで至りますと、仲介手数料を支払う必要があります。
仲介手数料は上限が法律で規定されています。
不動産仲介手数料の上限
不動産仲介手数料の上限は売却価格に応じて決められています。
売却価格(成約価格) | 仲介手数料 |
200万円以下 | 売却価格の5% |
200万円超~400万円以下 | 売却価格の4%+2万円 |
400万円超 | 売却価格の3%+6万円 |
ただし上記計算式の売却価格は税抜き価格です。
また仲介手数料には別途消費税がかかります。法律で規定されている仲介手数料は上限のため、媒介契約時にそれ以下の仲介手数料で設定することができます。
小島解説員
不動産仲介手数料を支払うタイミング
不動産仲介手数料を支払うタイミングについては特に法律上の規定はありません。一般的に下表の通りです。
支払うタイミング | 支払う仲介手数料 |
売買契約時 | 50% |
引渡し時 | 50% |
不動産仲介業者を使って売却する流れ
不動産仲介業者を使って売却する際、扱う不動産の条件によっても売却期間は異なります。一般的な売却期間の目安としては以下となります。
- 売却活動開始~売買契約:約3か月~半年間
- 売買契約~不動産引渡し:約1か月~2か月
トータルで4か月~8か月の半年前後を見込んだ方が良いです。
渡邊編集者
STEP1 不動産仲介業者を探し契約を結ぶ
不動産仲介業者の調査・選択は不動産売却を成功させるか否かの分岐点となる重要な作業となります。しかし大半の方が不動産取引においては素人になります。
机上査定:不動産売却一括査定サイトの利用
小島解説員
査定サイトといいましても、約数十に及ぶ様々なタイプの査定サイトが存在します。これらの査定サイトを利用しますと、1サイト当たり運営者が厳選した不動産会社の中から3~6社を選択し、査定価格を提示してもらえます。
訪問査定:不動産の現地調査
絞った2~3社の不動産会社に訪問調査(現地調査)を依頼し、査定価格の提示を再度依頼します。
机上査定の段階ではWEBサイト上だけでの調査結果に基づく査定価格ですので、簡易的な算出根拠となります。訪問査定では、売却物件の状況や周辺環境などを、より詳細に調査した上での査定価格となりますので、算出根拠が明確な価格となります。
これに不動産会社の力量がプラスされ、最終的な査定価格が提示されます。その中から、価格や算出根拠、不動産会社、営業マンなどを総合的に勘案して1社に絞ります。
媒介契約を締結
上記においても解説しましたが媒介契約には一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約の3種類があります。それぞれメリット・デメリットがありますので、自身のタイプに合った契約方法を選択します。媒介契約の締結にあたり必要な書類は下記の通りです。
- 購入時の売買契約書、重要事項説明書
- 登記事項証明書(登記簿謄本)
- 登記識別証明情報(権利証)
- 固定資産税納税証明書
- 売却不動産の測量図、図面、仕様書
- 管理規則(マンションの場合)
STEP2 不動産会社が売却活動開始
不動産会社と媒介契約を締結しますと売却活動が開始されます。不動産会社は物件案内を様々な広告媒体を通して行います。主に不動産会社が閲覧するレインズへの登録や、一般の人も多く閲覧するSUUMOやLIFULL HOME’SといったWEBサイトにも登録されます。
また売却不動産近隣への新聞折込みチラシや、不動産会社による案内チラシのポスティングにより、広告活動が行われます。買主候補者が現れた場合、売却不動産への内覧も重要な活動になります。
STEP3 買い主と売買契約を交わす
買主が購入を決断しましたら売買契約を締結します。
売買契約の締結にあたり必要な書類は下記の通りです。
- 売買契約書、重要事項説明書(不動産会社が準備)
- 実印
- 印鑑証明書
- 本人確認書類(自動車免許証、パスポートなど写真が添付されている書類)
この時、不動産会社へ仲介手数料の50%を支払う場合が一般的です。尚、媒介契約時に必要な書類は不動産会社が預かっている場合が多く、売買契約時に不動産会社が持参します。
STEP4 売却する物件を買主に引き渡す
売買契約が完了しましたら売却物件の引渡しです。引渡し時には下記の手続きが必要です。
- 必要書類の引渡し:売却不動産の測量図・図面・仕様書、マンション管理規定など
- 鍵の引渡し
- 売却価格の残金決済:手付け金を差し引いた残金の振込確認
- その他、売却に伴う費用の清算:固定資産税・都市計画税など
- 不動産会社への仲介手数料の決済
- 司法書士報酬・登録免許税の決済
以上の手続きを完了しますと売却活動は完了です。
不動産仲介業者で売却を成功させるポイント
渡邊編集者
小島解説員
複数の不動産会社に査定依頼する
売却を成功させるには複数の不動産会社に査定依頼する必要があります。
小島解説員
査定サイトは運営者が厳選した不動産会社による売却査定価格を、無料で依頼できるサービスを提供するサイトのことです。使用方法は査定価格を提示してもらうにあたり、最低限必要な情報を入力します。入力時間は査定サイトごとに異なり、概ね1分~3分位です。
その後、3社~6社の不動産会社がリストアップされます。その中から選択した不動産会社に対して査定依頼をします。査定価格や根拠を記した査定結果は郵送やメールなどで届きます。しかし、以下のような心配をされるかもしれません。
- 査定を依頼した不動産会社からの営業電話が、しつこくかかってくるのでは?
- 査定サイトに入力した個人情報が洩れるのでは?
査定サイトの運営者はその様な行為に及ぶ不動産会社を排除していますので安心です。
不動産査定サイトも複数利用しよう
不動産査定サイトを2~3以上複数利用し不動産会社を10社前後選択しますと、売却しようとする不動産に適した不動産会社を選択できる可能性が高まります。査定サイトにも様々な特徴があります。例えば以下など様々です。
- マンションに強い査定サイト
- 一戸建てを主に扱う査定サイト
- 不動産会社の登録数が多い査定サイト
- 全国をカバーする査定サイト
- 地域限定の査定サイト
査定サイトを使い分けして利用しますと、売却しようする不動産を得意とする不動産会社を見つけることができます。
査定額の根拠をしっかり提示してもらう
査定依頼をした不動産会社からの査定価格が出揃いましたら査定価格の根拠を確認することが大切です。根拠が不明確であれば当方から不動産会社に連絡をしても良いですし、査定サイトの運営者を通して、不動産会社に根拠の提示を依頼するのも良いです。
不動産会社は査定価格の根拠の提示を求められた場合、「宅地建物取引業法」により、説明責任がある旨を謳っています。
宅地建物取引業法:第34条の2第2項
宅地建物取引業者は、前項第二号の価額又は評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない。
したがって気兼ねなく不動産会社に問い合わせることが大切です。その中から納得のいく根拠を提示した不動産会社を選択するのも良策といえます。
担当者の相性も確認する
不動産会社の担当者との相性も大切です。
媒介契約を締結してから約半年前後に亘り、売却活動を共に行う必要があります。安心して不動産売却を任せることができる不動産会社の担当者を選択したいものです。そのためにも訪問査定時や電話・メールなどのやり取りを通して、説明の分かり易さや対応の丁寧さ、礼儀正しさなどを見極める必要があります。
まとめ
以上、不動産仲介業の概要や3種類の媒介契約のメリット・デメリット、仲介手数料、売却する流れ、売却成功のポイントについて解説しました。不動産を高く売却するためには以下をすることが重要です。
- 3種類の媒介契約の中から、不動産の特性や自身の顧客リストに応じて選択
- 複数の不動産会社の中から、査定価格の根拠・営業手腕・相性などを見極めて厳選
売主側も依頼した不動産会社に任せっきりにすることなく、連絡を密に取り微調整しながら売却活動されることをお勧めいたします。