不動産の囲い込みは通報できる?国土交通省が規制を強化

不動産の囲い込み 通報できる?


この記事を書いた人
小島 優一
宅地建物取引士

宅地建物取引士、2級ファイナンシャルプランニング技能士。生命保険会社にてリテール業務に従事した後、2014年に不動産仲介会社であるグランドネクスト株式会社を設立。 2021年より幻冬舎ゴールドオンラインにて不動産を通じて財産を守る、増やす、残す記事を連載している。 >> 詳細はこちらから

この記事のまとめ
  • 不動産の囲い込みは法的に違法か解説
  • レインズに載せない契約帖の義務の違いについて紹介
  • 不動産の囲い込みを通報する方法

不動産業界に少しでも関わったことがある方の多くは、「囲い込みは違法だ」と考えているかもしれません。

しかし、実は不動産の囲い込みが宅地建物取引業法(宅建業法)違反に当たらないという事実を知っている人はあまり多くありません。

大手の不動産会社でも問題視されることの多い囲い込みですが、2025年に法改正が行われ、国土交通省が規制を強化していくことが予測されています。

本記事では、囲い込みの実態と法的な解釈、そして通報や罰則について詳しく解説します。

不動産の囲い込みは違反?

不動産の囲い込みは、消費者に不利益を与える行為ですが、実は必ずしもすべての囲い込みが違法とされるわけではありません。

囲い込みは必ずしも違反ではない?

ここでは、囲い込みが違反となるケースと、法律の範囲内で行われるケースについて詳しく解説します。

「囲い込み」とは、売主から依頼を受けた不動産業者が、物件の情報を他の業者や買主に故意に公開しない行為を指します。

この行為は取引を不当に制限するため、多くの人が不正だと感じます。

小島解説員小島解説員

しかし、実際には囲い込み自体は宅建業法の直接的な違反とはみなされません。

宅建業法や国土交通省のガイドラインでは、「積極的に取引を促進する努力」が求められているものの、囲い込みを明確に禁じる条項は存在しません。

そのため、物件の情報を囲い込む行為そのものは、違法行為とされていないのです。

ただし、専任媒介契約や専属専任媒介契約を結んでいる場合には、物件を不動産流通標準情報システム「レインズ」に登録する義務があります。

専任媒介契約にはレインズ登録が義務

山口編集者山口編集者

レインズの登録義務は以下となります。
専任媒介・専属専任媒介契約の特徴
  • 専任媒介契約:売主が一社の不動産業者と契約を結び、その業者だけが取引を仲介します。この契約では、物件情報を不動産流通標準情報システム「レインズ」に5日以内に登録する義務があります。
  • 専属専任媒介契約:専任媒介契約と同様に、一社の不動産業者だけが仲介を行いますが、さらに売主が自ら直接買主を探すことも禁じられます。この場合、レインズへの登録は契約から3日以内に行わなければなりません

専任媒介契約を結び、期限内にレインズに載せないで囲い込みを行った場合、これは宅建業法違反となり、厳しい罰則の対象となります。

違反が確認されれば、業務停止処分や罰金、場合によっては免許取り消しといった措置が取られることもあります。

これに対して、一般媒介契約では、売主が複数の不動産業者に依頼することが可能です。

この契約の場合、レインズへの登録義務はありません。

つまり、一般媒介契約では業者が物件情報を囲い込むことが法的に問題とならないケースも多いです。

大手不動産会社も囲い込みを行っていた

 「でも、不動産の囲い込みなんて、やばいの大手はやらないでしょ?」 なんて思う方もいるかもしれません。

 しかし、実際には2015年のダイヤモンドオンラインで、「大手不動産が不正行為か流出する“爆弾データ”の衝撃」という記事が発表され、世間を驚かせました。

その記事によると、2013年の調査で三井のリハウスによる囲い込みが40件確認されたという内容が含まれていました

しかし、これは10年以上前の状況であって、今現在も囲い込みが行われているかというと不明です。

ただ、大手企業でさえ過去に囲い込みを行っていたことを考えると、現在も他の大手や中堅不動産業者が同様の行為をしていないとは断言しにくいでしょう。

小島解説員小島解説員

不動産の囲い込みは通報できる?どこへ?

不動産の囲い込みは、売主や買主、さらには他の不動産業者にとっても非常に迷惑な行為です。

このような囲い込みの被害に遭った場合、どこに通報して是正を求めることができるのでしょうか?

通報先の選択肢

不動産の囲い込みの通報先として考えられる機関は以下の通りです。

ケース別通報先
  1. 国土交通省
    • 不動産仲介業者を監督している機関で、宅建業法に違反する行為について通報が可能です。
  2. 都道府県庁
    • 物件所在地の都道府県庁も、宅建業法違反に関する通報を受け付けています。特に、専任媒介契約にもかかわらずレインズに登録しないケースなどが該当します。
  3. レインズ(REINS)
    • 不動産流通標準情報システムであるレインズに対して、物件不紹介の問題について通報できます。レインズには東日本・西日本・中部・近畿などの地域機構があるため、該当する機関に連絡しましょう。

通報の方法と注意点

通報が可能ではありますが、注意が必要です。

小島解説員小島解説員

通報先はケースによって異なるため、どのような違反に該当するのかを確認してから行動することが重要です。

例えば、専任媒介契約でありながらレインズに物件を掲載しない場合は、国土交通省や都道府県庁への通報が適切ですが、物件不紹介の場合はレインズへの通報が求められます。

通報制度の疑問点

実際に都庁やレインズに通報したという口コミを調査したところ、総じて売主からの訴えがないと動かないという内容が目立ちました。

つまり、売主が囲い込みに気づかない場合、その問題は放置されてしまう可能性が高いのです。

しかし、レインズを見るのは主に買い手や不動産業者であり、外部の関係者が問題に気づいて通報しても、売主からの訴えがなければ受け付けられないというのは、果たして法的な規制として意味があるのか疑問が残ります。

不動産の囲い込みを国土交通省が規制強化【2025年~】

これまでの法的規制では、不動産の囲い込み行為を取り締まることが難しく、更には通報の点でも消費者にとって不利な状況が続いていました。

しかし、2025年から不動産業界における囲い込み行為への規制が大幅に強化されることが決定しました。

新たな法改正では、特定の不動産業者による独占的取引や情報の制限が厳しく取り締まられることになります。

具体的には、囲い込み行為の明確な定義がなされ、違反した業者には罰金や業務停止などの厳しい処分が科される見込みです。

国土交通省の意図と影響

この規制強化は、消費者保護を目的とした国土交通省の戦略の一環です。

過去の事例を振り返ると、一部の業者による囲い込み行為が市場の競争を阻害し、消費者に不利な状況をもたらしていました。

先に話した通報しても対応されないといった口コミがまさに消費者には不利な状況と言えるでしょう。

小島解説員小島解説員

この新しい規制は、消費者がより多くの情報を元に判断できる環境を整えることを目的としており、結果として業界全体が顧客重視の姿勢へとシフトすることが期待されます。

処分対象となる具体的な行為

2025年から取り締まりの対象となる行為には、特定の不動産業者にのみ物件情報を提供することや、他の業者への情報開示を拒否する行為が含まれます。

また、物件情報の共有を制限する契約や取り決めを結ぶこと、特定の業者以外との取引を禁止する条項を設けることも規制の対象となります。

これらの行為は、市場の透明性を損ない、消費者にとって不利益をもたらす要因となりかねません。

山口編集者山口編集者

このような囲い込み行為の規制を強化することで、今までの売主からの通報にしか対応されないといった口コミが少しでも減ることを願うばかりです。

(参照元:国土交通省

不動産の囲い込みにおける罰則

不動産の囲い込みには、さまざまな罰則が設けられています。

ここでは、具体的な罰則について詳しく解説します。

行政責任

不動産の囲い込みが宅建業法に違反する場合、宅建業者は行政責任を負うことがあります。

特に、損害を受けた場合には、国土交通省や都道府県庁に相談することで、宅建業者に対して「指示処分」や「業務停止処分」といった監督処分が下される可能性があります。

このような行政処分は、業者に対して厳しい制裁をもたらすことがあるため、業者に対する警告として機能します。

レインズ(REINS)

物件の紹介を受けられなかった場合には、レインズに相談することが重要です。

この場合、宅建業者は「是正勧告」や「注意」、「戒告」などの措置を受けることがあります

これらの措置は、業者に対して囲い込み行為の是正を促すためのものであり、業界全体の健全性を保つために役立ちます。

刑事責任

不動産の囲い込みは、仲介業者の不正行為と見なされることがあり、場合によっては「詐欺罪」や「背任罪」として刑事責任を問われることもあります。

このような場合、法的な処罰が科せられ、業者は刑事訴追を受ける可能性があります。

したがって、仲介業者は法律を遵守し、正当な取引を行うことが求められます。

民事責任

不動産の囲い込みにより生じる民事責任についても考慮が必要です。

仲介業者が不正行為を行った場合、損害賠償責任が生じる可能性があります。

特に、媒介契約書には「契約の成約に向けて積極的に努力すること」が義務付けられているため、この義務を怠ると契約違反と見なされます。

したがって、囲い込み行為は業者にとって重大な法的リスクを伴うものとなります。

囲い込みから身を守る方法

不動産の囲い込みを避けるためには、売主が積極的に対策を講じることが重要です。

以下に、効果的な方法をいくつか紹介します。

1. 信頼できる仲介業者を選定する

まず、信頼性の高い仲介業者を見極めることが最優先です。

業界には多様な業者が存在しますが、そのすべてが透明性のある業務を行っているわけではありません

山口編集者山口編集者

口コミや評判、過去の実績を調査し、業者が所属する団体(例:全日本不動産協会など)を確認することも役立ちます。

また、契約前に「囲い込みを避けるために、両手取引を行わないでほしい」と伝えておくと、業者に牽制効果を与えることができます。

2. 一般媒介契約を締結する

囲い込みを徹底的に避けたい場合、一般媒介契約を選ぶことが推奨されます。

この契約形態では複数の仲介業者に売却依頼を行えるため、販売活動が制限されることがなく、業者が囲い込みを働くことはほとんどありません

専属専任媒介契約や専任媒介契約と比べ、自由度が高い点が大きなメリットです。

3. 定期的な業務報告を確認する

契約の形態によっては、業務報告書の提出が義務付けられています。

専属専任媒介契約の場合は1週間ごと、専任媒介契約では2週間ごとに報告を受け取ることができます。

報告内容が薄い場合や、営業活動に関する情報が乏しいと感じた場合は、すぐに不動産会社に確認を行いましょう。

このように定期的にコミュニケーションを取ることで、業者の活動を促す効果があります。

4. 他の業者からの確認を依頼する

内見のリクエストが全くない場合、囲い込みが行われている可能性があります。

信頼できる知り合いに不動産業者を装って内見の可否を確認してもらう方法もあります。

この方法で、囲い込みの実態を知る手がかりになるでしょう。

5. 特約を設定する

専属専任媒介契約や専任媒介契約を結ぶ場合、媒介契約書に特約を入れることも有効です。

例えば、「契約日から1ヶ月経過後は契約解除が可能」といった条項を盛り込むことで、囲い込みに気づいた際に迅速に解約できるようにしておくことができます。

これらの方法を駆使して、囲い込みから身を守ることができます。

山口編集者山口編集者

信頼できる業者との関係を築き、透明性のある不動産取引を目指しましょう。

まとめ

不動産の囲い込み行為は、売主や買主、他の不動産業者にとって大きな迷惑となる問題であり、法的には違反と見なされることがあります。

この行為が発覚した場合、国土交通省や都道府県庁、レインズなどへの通報が可能であり、適切な是正を求めることができます。

通報することで、囲い込みに対する具体的な罰則が適用される可能性もあります。

例えば、行政責任や民事責任が問われる場合があり、宅建業者は損害賠償責任を負うこともあります。

また、物件不紹介に関しては、レインズを通じて「是正勧告」や「注意」「戒告」を受けることがあります

さらに、2025年からは国土交通省による規制が強化される予定であり、これにより不動産業者による特定の行為に対する処罰が厳格化される見込みです。

この新しい規制は、消費者の利益を守り、不動産取引の透明性を向上させることを目的としており、業界全体の信頼性向上が期待されています。

今後は、囲い込み行為を防ぐための意識を高めることが求められ、消費者にとってより公正で開かれた不動産市場の実現に向けて、業界が努力する必要があります。

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