- 共有持分割合の決め方と重要性とは
- 共有名義のマンションを売却する際に必要な書類
- 委任状を使えば代行売却も可能
「共有名義の不動産を売却したいけど不要な問題やトラブルは起こしたくない」 共有名義の不動産は複数人で不動産の所有権を有しているため、何かと制約があったりトラブルが起こりがち。 しかし、あらかじめ共有名義の特徴や性質を理解しておくことで、単独名義と同様にスムーズな不動産売却を実現することが可能です。
本記事では共有名義の不動産を売却するにあたり、押さえておきたい共有名義の特徴をはじめ、売却のコツや注意点、売却する方法について解説します。
共有名義とは
まずはじめに共有名義及び共有持分権者ついて解説します。
共有名義と単独名義の違い
共有名義とは1つの不動産複数人で保有している状態のことを指します。 該当するケースとしては不動産を夫婦共同名義で購入したり、親子や兄弟、または相続人全員で取得した場合があたります。
対する単独名義は文字通り1人の名義で不動産を購入・登記・保有することを指します。 単独名義であれば不動産を売却や相続、財産分与する際など、所有者の一存で意思決定をすることが可能ですが、共有名義となると共有名義人全員の意思統一が不可欠であったり、売却や財産分与に反対や拒否する人がいれば、各種手続きを進めることができません。
共有持分権者とは
共有持分権者とは複数人で所有している不動産(財産)の際に、個々人が持っている持分を共有持分と言い、それを有している人物を共有持分権者と言います。 この場合、原則は各共有者は等しく持分を所有し、共有関係になると定められています。(民法250条)
共有持分権者の特徴やできることについて
続いて共有持分権者の基本的特徴やできることについて列挙して解説します。
共有持分権者の保存と使用について
共有持分権者は所有する不動産に対して「保存」と「使用」する権利が認められています。 保存とは経年劣化によって起こる不具合に対して、不動産の現状を維持することを目的とした、修理や取り換えなどの修繕することを指します。
この場合、共有持分の範囲だけでなく建物全体を使用することも可能です。 これらの行為は民法249条に「各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる」と権能を有する記述が明記されています。
共有持分権者の過半数の同意があれば利用と改良も良い
共有持分権者単独での行動では不可能ですが、共有持分を有する権利者の過半数の同意があれば以下の行為も認められています。
「利用」…不動産を賃貸物件として活用し、短期的に共有者以外に利用させることや賃貸借契約を解除することが可能です。
「改良」…上記に記載した現状を維持することを目的とした「保存」ではなく、不動産の価値を高めるために行うリフォームやリノベーションを指します。
全員の同意がある時は処分になる
共有持分を有する全員の同意がある時は不動産を「処分」することができます。 ここで述べる処分とは不動産の売却をはじめ、抵当権の設定や借地借家法に基づく賃貸借契約の締結、大規模な修繕工事などがこれに該当します。
共有持分割合の決め方と重要性
共有持分の割合は該当する不動産(財産)を取得した方法が「購入」なのか「相続」なのかによって、共有持分の決め方は異なってきます。 購入であれば土地や建物の購入代金や各種税金、ローンや金利の支払いなど、共有で支出している金額(資金)の割合がそのまま共有持分に適用されます。
- 夫の負担金…4000万円(内訳:預貯金 1000万円/金融機関ローン 3000万円)
- 妻の負担金…1000万円(内訳:預貯金 1000万円)
この場合、夫の共有持分4/5、妻の共有持分1/5となります。 (負担金額に応じて決定)
一方相続によって共有持分を定める場合、大半のケースで「法定相続分」が共有持分となります。
- 配偶者と子(第1順位)の場合→配偶者1/2、子1/2
- 配偶者と両親などの直系尊属(第2順位)の場合→配偶者2/3、両親など1/3
共有名義のマンションは売却できます!
結論から先に伝えると共有名義のマンションを売却することは可能です。 ただし単独名義のように自身の一存で決定することは難しいため、以下のような手順や同意を得る必要があります。
まずは共有名義全員の了承を得る
もっとも効率的な方法は共有名義全員の了承を得ることです。 仮に権利を有する全員の合意が得られれば、共有名義のマンションを売却することができます。
共有持分の売却に関しては単独行為が可能
自身の有する共有持分割合の範囲であれば、自分の持ち分のみ売却することが可能です。 この場合、共有持分権者の許可や承諾は必要ありません。 しかし一般的に建物を権利者に応じて当分することができないため、この方法は土地のみに使える方法と言えます。
単独名義にすれば自由に売買が行えます
共有持分のマンションを権利者間で売買し単独名義にすることで自由に売買をすることができます。 単独名義であれば許可や了承は不要なため、好きなタイミングで自由にマンションを売却することが可能です。
共有名義のマンションを売却するコツ
共有名義のマンションを売却するためには共有持分権者全員の了承を得る必要があります。 以下では、共有持分権者全員に対して、売却の同意を得やすいコツについて解説します。
一括査定を利用する
共有名義のマンションを売却するためには、共有持分権者全員の合意形成が不可欠です。 しかし、ただ売却することを伝えるだけでは共有持分権者全員の合意を得ることは難しいでしょう。
そこでおすすめなのが、一度の申請で複数の不動産会社から査定を受けることができる「一括査定サイト」です。 複数の不動産会社から査定価格を受け取れるため、該当するマンションの売却価格の相場観を権利者で共有できるため、前向きな話に促すことができます。
共有持分買取業者を利用してみる
売却へのアクションを促すためには共有持分買取業者を利用してみるのもよいでしょう。 専門の買取業者であれば短期的かつ確実に買い取ってくれるため、時間や労力をかけずに売却までスムーズに行うことが可能です。
不動産の専門家に相談する
一括査定や買取業者に依頼すること以外に不動産の専門家に相談することも一つの手段になります。 専門家であれば経済情勢や不動産の相場感、共有名義であることのメリット・デメリットなど総合的な判断のもとアドバイスをもらえるため有益な方法と言えます。
また一括査定をお願いした不動産会社に依頼すれば、物件の状況や周辺不動産の売買状況などタイムリーな情報も提供してくれるため、共有持分権者を説得しやすくなります。
共有名義のマンションを売却する際の注意点
以下では共有名義の不動産を売却する際の注意点について解説します。
共有名義のマンションを売却する際に必要な書類
共有名義のマンションを売却する際に不可欠な必要書類は以下の通りです。
- 権利証(登記識別情報):マンションの権利書を指しており、その不動産が「誰のものか」を示すための書類です。
- 地積測量図及び境界確認書:土地の面積や隣地との境界線を示す書類です。 有する土地の境界がどこにあるかを定めた書類で仮に測量されていない場合は、まず調査士に依頼することから行いましょう。
- 身分証明書、印鑑証明書など:マンションの売却には売主本人の確認書類が必要になります。 仮にマンションが共有名義なら、共有持分権者全員の書類が必要ですので注意しましょう。※住民票や印鑑証明書などの書類を用意する際は、3ヶ月以内に発行された書類が必要
- 委任状:共有持分権者のうち売却を委任する場合は必要になります。
名義の確認は細かくチェックしておこう
共有名義のマンションを売却する際はマンションの所有が「単独」・「共有」のどちらになっているかしっかり確認しましょう。
単独名義なら特に問題はありませんが、共有名義の場合、権利者の意見の相違や委任状の有無、売却後の利益分配など、トラブルや問題になる箇所があるため事前に名義の確認は細かくチェックしておくことをおすすめします。
税金やローンの返済には十分注意する
共有名義のままマンションを売却する場合、税金やローンの返済にも注意する必要があります。 マンション売却時にローンの残債が残っていると残債分を一括返済することになります。
売却金額で充当できればいいですが、仮に売却金額が想定より低いと、各自で自己資金を用意しなければなりません。 自己資金を捻出するのであれば、あらかじめ共有持分権者のうち誰が支払うかを明確にしておきましょう。
共有持分権者同志の合意があれば共有持分割請求が行える
共有持分権者同志の合意が形成されれば共有持分割請求が行えるため、一定の制約がある共有名義の不動産でも共有状態を解消する権利が認められます。
委任状を使えば代行売却も可能
共有名義の不動産を売却するには共有持分権者全員の了承及び立ち合いが必要になります。 しかし立ち合いが難しいなどの諸事情がある場合には「委任状」を使用して代行売却することができます。
ただし所有者本人が第三者に委任状を付与し、その代理の者が不動産売却に立ち会う場合は以下のようなケースでなければなりません。
- 取引を行う不動産が遠方である
- 契約のために時間を作ることが困難
- 病気や怪我を患いその場に出向けない
委任状を使った売却方法と必要なもの
代理人に委任状を託し不動産売却を行う場合、以下の書類が必要になります。
- 土地の表示項目
- 建物の表示項目
- 委任の範囲(この場合、不動産を売却する旨を明記)
- 有効期限
- 代理人の名前及び住所
- 委任者(所有者本人)の名前及び住所の署名・捺印(実印)
- 書面日付
- 委任者(所有者本人)の印鑑証明(3ヶ月以内のもの)
- 委任者(所有者本人)の直筆の署名及び捺印(実印)
- 代理人の印鑑証明、実印
- 代理人の本人確認書類
委任状に不備があったり必要書類が欠けていると正式な代理人とは認めれず、委任状自体の効力もなくなってしまいます。 そのため委任状を活用した不動産売却を行うなら記載した点や委任する内容に相違がないかなど事前にチェックしておきましょう。
共有名義の不動産が土地の場合は分筆が使える
最後に解説するのは共有名義の不動産で活用可能な「分筆」についてです。 分筆とは1つの土地を2つに分けることを指しており、共有名義とは異なり単独名義の土地が分筆した数だけ増えることになります。
以下では分筆を利用する上で押さえておきたい手順や費用面、気をつけるべきポイントについて紹介します。
分筆の手順と費用
分筆を行う手順は以下の通りです。
- 正確な面積を割り出すため土地家屋調査士に依頼して、境界確定測量作成を行います。
- 分筆案を作成及び立ち合い
- 境界標の設置
- 土地家屋調査しに依頼して法務局で分筆した土地の変更登記手続きを行います。
- 分泌した土地を単独名義にするため所有権移転登記を行います。
ここまでにかかる費用の概算はおおよそ40〜60万円ほどが相場です。場合によっては100万円程度かかる場合もあります。
一例としては分筆登記の申請報酬は一般的な例(土地面積が100㎡程度で二筆に分割)であれば約6万円程度、ここに境界確定測量の費用30万円程度を加算すると40万円ほどがかかる費用の概算になります。
またこの他にも所有権移転登記には不動産の固定資産税評価額の0.4%の登録免許税と司法書士報酬を支払うことになるため、あらかじめ確認が必要です。
分筆で所有する土地の価値は変わる可能性もある
土地を分筆する場合、所有する土地をどう区分するかによっては土地の価値が変わる可能性があるため注意が必要です。
一般的に土地の価値は以下のような利便性の高さや使い勝手の有無によって価値が変動します。
- 道路に面しているか
- 日当たり
- 土地の形状
そのため、むやみに分筆してしまうと相場価格より低い価値になってしまう恐れがあるため、あらかじめ分筆を行うメリットを確認しておくことをおすすめします。
まとめ
本記事では共有名義の不動産を売却するにあたり押さえておきたい共有持分権者の特徴や売却するためのポイント、注意点について解説しました。 一般的に共有名義である以上、共有持分権者全員の了承を得ない限り制約された中で売却を模索するしかありません。
しかし共有持分権者が有する権利や特徴、注意点などを事前に把握しておけば、トラブルを起こすことなくスムーズな売却を行うことが可能です。 共有名義の性質や特徴を正しく理解して、自身の望む売却を実行しましょう。