- 不動産の囲い込を疑う具体的なサイン
- 不動産における囲い込みの通報先と正しい手順
- 囲い込みで想定される罰則
「不動産の囲い込みは通報できるのでしょうか?」
売主だけでなく、物件を探している買主にとっても切実な問題です。
不動産会社が物件情報を他社に公開せず、自社で両手仲介を狙ういわゆる囲い込みは、以前から業界の慣習として指摘されてきました。過去には大手仲介会社の事例が報道されたこともあり、不信感を抱く方も少なくありません。
これまで囲い込みは法的にグレーとされる部分が多く、「通報しても意味がないのでは」と感じる声もありました。しかし近年、監督官庁である国土交通省が規制を強化し、制度の見直しが進んでいます。
2025年以降は宅地建物取引業法の運用が厳格化され、悪質な囲い込みには行政処分や罰則が科される可能性が高まりました。市場の透明性を確保するための規制が具体化しつつあり、状況は確実に変わり始めています。
本記事では、囲い込みの基本的な仕組みから2026年時点での法的位置づけ、通報の可否や具体的な手順、想定される罰則の内容、そして売主・買主が取るべき現実的な対策までを順を追って解説します。
小島解説員
囲い込みとは?

ここでは不動産の囲い込みの仕組みを解説していきます。
囲い込みの基本的な仕組み
不動産における囲い込みとは、売主から依頼を受けた不動産会社が、物件情報を他の不動産業者や買主に故意に公開しない行為を指します。
本来、不動産会社は売主の利益を最大化するため、広く情報を公開し、購入希望者を募る努力義務があります。しかし、両手仲介(売主・買主の双方から仲介手数料を得る形)を狙うために、他社からの紹介を断るケースがあります。
特に問題となるのが、専任媒介契約や専属専任媒介契約を結んでいる場合です。これらの契約では、不動産流通標準情報システム「レインズ」への登録義務があります。
- 専任媒介契約:契約締結から5日以内に登録
- 専属専任媒介契約:契約締結から3日以内に登録
この登録を行わずに物件情報を囲い込んだ場合は、明確に法令違反となります。
両手仲介との違い
囲い込みと混同されやすいのが両手仲介です。
両手仲介自体は違法ではありません。
一社の不動産会社が売主と買主の双方を仲介することは、法律上認められています。
問題となるのは、両手仲介を実現するために他社からの問い合わせを意図的に断ったり、レインズへの登録を怠ったりする行為です。
つまり、
- 両手仲介=合法
- 囲い込み(義務違反を伴うもの)=違法
という違いがあります。
なぜ囲い込みが問題になるのか
囲い込みは、市場の競争を阻害します。
物件情報が広く公開されなければ、購入希望者が減り、結果的に売主が不利な価格で売却せざるを得なくなる可能性があります。
過去には大手不動産会社でも囲い込みが問題視された事例があり、市場全体の透明性に疑問が投げかけられました。
2015年のダイヤモンドオンラインで、「大手不動産が不正行為か流出する“爆弾データ”の衝撃」という記事が発表され、世間を驚かせました。
その記事によると、2013年の調査で三井のリハウスによる囲い込みが40件確認されたという内容が含まれていました。
売主が囲い込みに気づかなければ、問題は表面化しにくいという点も深刻です。実際に通報しても「売主からの申告がなければ動きづらい」との口コミもあり、消費者にとって不利な構造が続いていました。
小島解説員
囲い込みは違法!2026年の法的位置づけ

近年、国土交通省 による規制強化を背景に、法的位置づけが明確化されました。2026年時点での最新動向を確認していきましょう。
改正前はグレーゾーンだった
これまで囲い込みは、消費者に不利益を与える行為であるにもかかわらず、法律上は明確に禁止されているとは言い切れない側面がありました。
宅建業法では、不動産会社に対して「誠実に業務を行うこと」や「取引の公正を害する行為をしてはならないこと」が求められていました。しかし、囲い込みという行為そのものを直接的に禁止する条文は存在していませんでした。
そのため、
- 両手仲介を狙って他社紹介を断る
- 情報公開を積極的に行わない
といった行為も、直ちに違法とは断定しづらい状況が続いていました。
ただし、専任媒介契約・専属専任媒介契約におけるレインズ登録義務を怠った場合は、従来から宅建業法違反に該当していました。
小島解説員
2025年改正で何が変わった?
2025年以降、囲い込みに対する規制は明確に強化されました。
監督官庁である国土交通省 は、市場の透明性確保と消費者保護を目的に、囲い込み行為を実質的に取り締まる方向へ制度を整備しています。
法的根拠となるのは宅地建物取引業法 です。改正のポイントは以下のとおりです。
- 取引を不当に制限する行為の明確化
- レインズ登録・情報公開義務の厳格運用
- 指示処分・業務停止処分の運用強化
- 不適切なステータス管理(虚偽の商談中表示など)への監督強化
(参照元:国土交通省)
これにより、従来は立証が難しかった囲い込み行為も、行政処分の対象として扱われやすくなりました。
単なる営業戦略では済まされず、行政指導や処分のリスクを伴う行為へと位置づけが変わってきています。
囲い込みが違法になる具体例
では、どのような場合に違法となるのでしょうか。
小島解説員
① 専任媒介なのにレインズ未登録
契約期限内にレインズへ登録しない場合は、明確な宅建業法違反です。
② レインズに虚偽のステータスを登録
実際は紹介可能であるにもかかわらず、「商談中」「申込あり」などと登録し、他社からの紹介を排除する行為は、取引制限行為として問題視されます。
③ 他社からの内見依頼を意図的に拒否
売主の意思に反して紹介を断る場合、善管注意義務違反や誠実義務違反に問われる可能性があります。
④ 特定業者以外との取引を禁止する取り決め
市場競争を不当に制限する契約や運用は、行政処分の対象となり得ます。
小島解説員
囲い込みを疑うサイン7選

囲い込みは外から見えにくい行為です。
しかし、売主の立場からでも違和感として囲い込みに気づけるポイントがあります。
①レインズ登録証が渡されない
専任媒介契約・専属専任媒介契約では、レインズへの登録義務があります。
- 専任媒介:5日以内
- 専属専任媒介:3日以内
登録後は「登録証明書(登録確認書)」が発行されます。
これが渡されない、もしくは「後で渡します」と言われ続ける場合は要注意です。
登録そのものが行われていない可能性があります。
②「商談中」と言われ続ける
他社からの問い合わせがあったか確認すると、「今商談中なので紹介できません」と言われ続けるケースがあります。
短期間であれば問題ありませんが、長期間にわたり商談中のまま動きがない場合は、他社への紹介を意図的に断っている可能性があります。
③他社から内見を断られた
知人の不動産会社や別会社に問い合わせてもらった結果、「すでに決まりそうです」「売主の意向で紹介できません」と断られた場合は注意が必要です。
売主の意思と異なる対応がなされている可能性があります。
④価格変更を急に迫られる
内覧が少ない理由を十分に説明しないまま、「価格を下げないと売れません」と急に値下げを勧められるケースもあります。
囲い込みが原因で反響が少ないにもかかわらず、売れない責任を価格に転嫁している可能性があります。
⑤内覧数が極端に少ない
相場価格にもかかわらず、内覧がほとんど入らない場合は違和感を持つべきです。
特に、ポータルサイトで類似物件が動いているにもかかわらず反響がない場合は、情報拡散が不十分な可能性があります。
⑥広告露出が弱い
- ポータル掲載が遅い
- 写真が少ない
- 情報が簡素
こうした対応は、積極的に売却活動をしているとは言い難い状態です。囲い込み目的で露出を意図的に抑えているケースも考えられます。
⑦担当者の説明が曖昧
- 具体的な問い合わせ件数を答えない
- レインズ状況を見せない
- 「大丈夫です」と抽象的な説明だけ
説明の透明性が低い場合は、慎重に確認する必要があります。
通報前にやるべき証拠集め

囲い込みを疑っても、証拠がなければ通報は難しくなります。
感情ではなく、客観的事実を整理することが重要です。
媒介契約書の確認ポイント
まず確認すべきは契約の種類です。
- 一般媒介契約
- 専任媒介契約
- 専属専任媒介契約
専任・専属専任であれば、レインズ登録義務があります。
契約日も重要です。登録期限を過ぎていないか確認しましょう。
レインズ登録証明書の取得方法
登録が完了すると、登録証明書が発行されます。
未受領の場合は、正式に書面で提出を求めましょう。
また、レインズは地域ごとに機構が分かれており、代表的なものに 東日本不動産流通機構 があります。
登録の有無は、契約業者経由で確認するのが基本です。
メール・LINE履歴の保存方法
やり取りは必ず保存してください。
- スクリーンショット保存
- クラウドバックアップ
- PDF化
日時が分かる状態で残すことが重要です。
録音は違法にならない?
自分が当事者として参加している会話の録音は、原則として違法ではありません。
ただし、録音データの取り扱いには注意が必要です。第三者への公開やSNS投稿は名誉毀損にあたる可能性があります。
あくまで証拠保全目的にとどめましょう。
スクリーンショットの残し方
- ポータル掲載ページ
- 物件情報の表示状態
- 日付が分かる画面
画面全体を撮影し、保存日時が確認できる形で保管するのが理想です。
加工や編集は避け、原本データを残しておきましょう。
不動産の囲い込み通報先と具体的手順

不動産の囲い込みは、売主や買主、さらには他の不動産業者にとっても非常に迷惑な行為です。
このような囲い込みの被害に遭った場合、どこに通報して是正を求めることができるのでしょうか?
通報先の一覧(行政・団体)
不動産の囲い込みの通報先として考えられる機関は以下の通りです。
- 国土交通省
- 不動産仲介業者を監督している機関で、宅建業法に違反する行為について通報が可能です。
- 都道府県庁
- 物件所在地の都道府県庁も、宅建業法違反に関する通報を受け付けています。特に、専任媒介契約にもかかわらずレインズに登録しないケースなどが該当します。
- レインズ(REINS)
- 不動産流通標準情報システムであるレインズに対して、物件不紹介の問題について通報できます。レインズには東日本・西日本・中部・近畿などの地域機構があるため、該当する機関に連絡しましょう。
小島解説員
通報先はケースによって異なるため、どのような違反に該当するのかを確認してから行動することが重要です。
例えば、専任媒介契約でありながらレインズに物件を掲載しない場合は、国土交通省や都道府県庁への通報が適切ですが、物件不紹介の場合はレインズへの通報が求められます。
通報時に必要な情報テンプレ
囲い込みを通報する際は、感情的な訴えではなく、客観的な情報を整理して伝えることが重要です。
以下の項目を事前にまとめておきましょう。
通報前に整理しておく情報
- 業者名(会社名・支店名)
- 免許番号(例:〇〇県知事(1)第12345号)
- 媒介契約の種類(一般/専任/専属専任)
- 契約締結日
- 問題となっている具体的事実
(例:レインズ未登録、他社紹介を断られた等) - レインズ登録の有無と登録日
詳細な証拠(契約書・登録証明書・メール履歴など)については、前章で整理した内容を活用してください。
行政機関は事実関係の明確さを重視します。主観ではなく、時系列で説明できる形にまとめておくとスムーズです。
通報の流れ5ステップ
通報後は、一般的に次のような流れで進みます。
① 証拠整理
前章でまとめた資料を整理し、事実関係を明確にします。
② 連絡
該当する行政機関や団体へ、電話または問い合わせフォームから連絡します。
代表的な監督機関は国土交通省および各都道府県庁の宅建業担当部署です。
レインズ関連の場合は、東日本不動産流通機構など該当地域の機構へ連絡します。
③ 事実確認
行政側が契約内容や登録状況などを確認します。
追加資料の提出を求められる場合もあります。
④ 調査
必要に応じて、対象業者へのヒアリングや内部確認が行われます。
⑤ 処分判断
違反が認定された場合、指導・是正勧告・業務停止などの行政処分が検討されます。
小島解説員
不動産の囲い込みにおける罰則

不動産の囲い込みには、さまざまな罰則が設けられています。
ここでは、具体的な罰則について詳しく解説します。
行政責任
不動産の囲い込みが宅建業法に違反する場合、宅建業者は行政責任を負うことがあります。
特に、損害を受けた場合には、国土交通省や都道府県庁に相談することで、宅建業者に対して「指示処分」や「業務停止処分」といった監督処分が下される可能性があります。
このような行政処分は、業者に対して厳しい制裁をもたらすことがあるため、業者に対する警告として機能します。
レインズ(REINS)
物件の紹介を受けられなかった場合には、レインズに相談することが重要です。
この場合、宅建業者は「是正勧告」や「注意」、「戒告」などの措置を受けることがあります。
これらの措置は、業者に対して囲い込み行為の是正を促すためのものであり、業界全体の健全性を保つために役立ちます。
刑事責任
不動産の囲い込みは、仲介業者の不正行為と見なされることがあり、場合によっては「詐欺罪」や「背任罪」として刑事責任を問われることもあります。
このような場合、法的な処罰が科せられ、業者は刑事訴追を受ける可能性があります。
したがって、仲介業者は法律を遵守し、正当な取引を行うことが求められます。
民事責任
不動産の囲い込みにより生じる民事責任についても考慮が必要です。
仲介業者が不正行為を行った場合、損害賠償責任が生じる可能性があります。
特に、媒介契約書には「契約の成約に向けて積極的に努力すること」が義務付けられているため、この義務を怠ると契約違反と見なされます。
したがって、囲い込み行為は業者にとって重大な法的リスクを伴うものとなります。
囲い込みを防ぐ予防策

不動産の囲い込みを避けるためには、売主が積極的に予防対策を講じることが重要です。
以下に、効果的な方法をいくつか紹介します。
1. 信頼できる仲介業者を選定する
まず、信頼性の高い仲介業者を見極めることが最優先です。
業界には多様な業者が存在しますが、そのすべてが透明性のある業務を行っているわけではありません。
山口編集者
また、契約前に「囲い込みを避けるために、両手取引を行わないでほしい」と伝えておくと、業者に牽制効果を与えることができます。
2. 一般媒介契約を締結する
囲い込みを徹底的に避けたい場合、一般媒介契約を選ぶことが推奨されます。
この契約形態では複数の仲介業者に売却依頼を行えるため、販売活動が制限されることがなく、業者が囲い込みを働くことはほとんどありません。
専属専任媒介契約や専任媒介契約と比べ、自由度が高い点が大きなメリットです。
3. 定期的な業務報告を確認する
契約の形態によっては、業務報告書の提出が義務付けられています。
専属専任媒介契約の場合は1週間ごと、専任媒介契約では2週間ごとに報告を受け取ることができます。
報告内容が薄い場合や、営業活動に関する情報が乏しいと感じた場合は、すぐに不動産会社に確認を行いましょう。
このように定期的にコミュニケーションを取ることで、業者の活動を促す効果があります。
4. 他の業者からの確認を依頼する
内見のリクエストが全くない場合、囲い込みが行われている可能性があります。
信頼できる知り合いに不動産業者を装って内見の可否を確認してもらう方法もあります。
この方法で、囲い込みの実態を知る手がかりになるでしょう。
5. 特約を設定する
専属専任媒介契約や専任媒介契約を結ぶ場合、媒介契約書に特約を入れることも有効です。
例えば、「契約日から1ヶ月経過後は契約解除が可能」といった条項を盛り込むことで、囲い込みに気づいた際に迅速に解約できるようにしておくことができます。
これらの方法を駆使して、囲い込みから身を守ることができます。
山口編集者
まとめ
不動産の囲い込みは、これまでグレーとされる部分が多く、売主や買主が不利益を受けても対処が難しいケースがありました。しかし近年は、監督官庁である 国土交通省 による規制強化が進み、状況は大きく変わりつつあります。
2025年以降は、宅地建物取引業法 の運用がより厳格になり、レインズ未登録や虚偽の「商談中」表示など、実質的な囲い込み行為は行政処分や罰則の対象となる可能性が高まりました。単なる営業手法では済まされない時代に入ったといえます。
とはいえ、通報すれば必ず処分されるというわけではありません。重要なのは、感情的に動くことではなく、媒介契約の内容を確認し、レインズ登録証明書ややり取りの履歴などの証拠を整理したうえで、適切な窓口に連絡することです。正しい手順を踏めば、行政が事実確認や調査を行い、違反が認められれば処分が下されます。
また、囲い込みは起きてから対処するよりも、事前に防ぐほうが現実的です。信頼できる仲介会社を選ぶこと、契約形態を理解すること、業務報告を定期的に確認することなど、基本的な対策がリスクを大きく下げます。
囲い込みを疑ったときは、まず冷静に状況を整理し、制度と選択肢を正しく理解することが第一歩です。知識があれば、不利な立場に立たされる必要はありません。この記事が、売主・買主双方にとって納得のいく取引を実現するための判断材料になれば幸いです

